新規上場の老舗製紙会社に思わぬ事態 配当金4135万円を取締役が自腹で埋める

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仕方なく、追いかけるように6月11日には株主宛てに、この手続き不備の件については会社側が情報開示するリリースを閲覧するか、直接問い合わせしてほしい旨の文書を送付。そして6月11日夜になり、これまでの経緯について情報開示するリリースを公表したわけだ。

その間に取り急ぎ、会社法の定めにしたがい、取締役の責任において、中間配当金4135万円は補填された。つまり取締役が“自腹で埋めた”ことになる。それをどう決算処理するかは、「これから検討し、情報開示する方向」(会社側)という。

補填した4135万円は今期の特別利益に

ただし、すでに株主へ分配してしまった中間配当金について、同社は返還請求はしない方向で顧問弁護士と協議中だ。そのため、おそらく今2014年3月期の第1四半期(4~6月)において、取締役が補填した約4135万円は特別利益として計上されることになろう。

もともと阿波製紙は和紙発祥の特殊紙企業であり、祖業の藍商は江戸時代にまでさかのぼる老舗。現在ではエンジン用フィルターをはじめとする自動車関連資材で有力という、極めて特色ある企業だ。

ただ、業績面では、中国向け建機・重機向けの在庫調整を主因に、上場直後である前下半期(2012年10月~13年3月期)にいきなり営業赤字に転落。そのため、本業をどう立ち直らせるかが、今14年3月期の焦点となっている。会社側は今期計画について、通期では営業利益3.5億円の増益見通しを発表しているが、はたしてどうか。

そうした折も折、このような手続き不備が顕在化してしまったのである。会社側には今回の手続き不備の会計処理を含め、今後いったい業績がどう推移するのかについて、十分な情報開示を望みたい。

石井 洋平 東洋経済 記者

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いしい ようへい / Yohei Ishii

機械・小売り・電機・化学などの業界を担当

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