トランプ対ヒラリー、どんどん醜くなるワケ なぜこんな泥仕合になっているのか
この点に関してトランプ氏は討論会で、クリントン氏とその夫を執拗に攻撃。討論会の雰囲気を厳しく、対立的で、悲観的なものにした。また、トランプ氏の支持者を「嘆かわしい人々の集まり」と評したクリントン氏が「心にものすごい憎悪を抱えている」と批判した。
女性蔑視発言への批判を受けてトランプ氏がしたことは、ビル・クリントン氏が大統領時代にした行いに、大衆の注意を向けることだった。だが、逆効果になるかもしれない。ビル・クリントン氏が国を大きく混乱させたことを、有権者が思い出したがっているかは疑問だからだ。
また、ウィキリークスがクリントン氏に関する暴露を行ったのは打撃ではあったが、内容に新味はなく、致命的ではなかった。彼女にとって想定内だったし、ウィキリークス自体が中立的な情報源とは言い難いからだ。
トランプ氏は討論会で、オバマ大統領とヒラリー・クリントン氏が「分断された国」を作ったと非難した。だが、トランプ氏の態度は、彼が当選すれば分断を修復できるとの見方にはつながらなかった。荒々しい攻撃により、クリントン氏に割り当てられた時間と場所を侵害し続けたからだ。
トランプ氏は30年間にわたるクリントン氏の公職時代を痛烈に批判。税制改革やテロ終息、雇用回復など、やりたいと言ったことの多くを実現できなかったとした上で、「なぜやらなかったのか」知りたいと言った。クリントン氏の答えは、米国政府のシステムは複雑な問題を一撃で解決する権限を、大統領にすら与えていないというものだった。彼女は正しかったが、トランプ氏はこの議論に応じるのを拒絶した。
彼は、そうした問題すべてを解決する全能の指導者になると約束している。肝心なのは、彼の指導者がそれを信じている点だ。
最もワリを食うのは副大統領候補のペンス氏
共和党指導者の一部が大統領選から降りるよう求めたことに、トランプ氏は反発している。トランプ氏は共和党の指導者たちに逆らって政治的キャリアを積み上げてきたわけで、彼らに屈しようとはしていない。自分もろとも、彼らを引きずり降ろそうとしているだけだ。
本当に割りを食うのは、共和党副大統領候補でインディアナ州知事のマイク・ペンス氏だ。トランプ氏が今回落選すれば、ペンス氏は次回2020年の大統領選に出馬するだろう。だが、来月の選挙でトランプ氏が敗れ共和党が壊滅的な打撃を受ければ、今後数年間ペンス氏には逆風が予想される。ペンス氏はトランプ氏の女房役とされ、共和党員は2016年の大失敗を忘れたがるだろうからだ。
トランプ氏がこのまま選挙戦に残る一方で、ペンス氏が降りるようなことになれば、とても皮肉なことになってしまう。
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