若者の味方「原付バイク」はどこへ消えた? ヤマハ・ホンダ提携が示すバイク文化の凋落
50ccの規格は、販売がほぼ国内のみという「ガラパゴス車種」だ。グローバル展開によるスケールメリットが活かせない。ヤマ発は2001年12月から台湾に国内向け原付バイクの生産を移管し、製造コストの引き下げを図ってきた。それでも現状は「50ccバイクだけで見れば赤字」(渡部取締役)であるため、独自での開発・生産の継続は厳しいと判断した。
ヤマ発が原付バイクでの協業をホンダに打診したのは今年2月のこと。ヤマ発の2輪事業の営業利益率(2015年度)は3.1%であり、同10%をたたき出すホンダには大きく差を付けられている。
柳弘之社長はかねてから「2輪事業で7〜8%超の利益率を目指す」と話しており、2016年からの新中期経営計画での重点項目である2輪車事業の収益改善を進めるためには、不採算の原付バイクの生産撤退は不可欠だった。
原付バイクをやめるわけにはいかない
一方のホンダは国内向け原付バイクを、製造コストの安い中国やベトナムで生産していたが、円安を背景に2015年から順次国内の熊本製作所に移管した。ただ、熊本製作所の生産能力は20万台のところ、今期の生産計画は17万5000台と、まだ余力はある。ヤマ発の提案は、熊本製作所の稼働率を引き上げたいというホンダの思惑とも合致した。
日本自動車工業会など、オートバイ関連団体が発表した「二輪車産業政策ロードマップ」では、2020年の国内2輪車販売台数を100万台へ回復させることが目標として掲げられている。ただ、「電動2輪車やシェアリングといった新しい価値が提供できなければ、従来の販売形態のままで100万台に戻すのは難しい」(ヤマハ発の渡部氏)のが現実だ。
ホンダとヤマ発は原付スクーターのOEM供給に加え、原付バイクの業務用車両や電動バイクについても協業を進める方向で検討を開始する。需要が先細っているとはいえ、オートバイの”入門編”としての重要性もある。ホンダの青山真二取締役は「50ccで入り口を開けておかなければ、より大きな排気量のバイクに消費者が上がってきてくれない」と話す。
原付バイクはもはや若者に見向きもされていない。そんな中、かつてのライバル同士が手を組んだのは、日本のバイク文化を絶やさないために現実解を模索した結果だといえる。
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