若者の味方「原付バイク」はどこへ消えた? ヤマハ・ホンダ提携が示すバイク文化の凋落

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この頃から「HY戦争」とよばれるホンダとヤマ発の販売合戦が激しさを増していった。ホンダは1980年、ヤマ発のパッソルと真っ向勝負するスクーター「タクト」を発売する。その後も両社は立て続けの新型車投入で乱売合戦を繰り広げ、過激な値引き競争へと発展した。

だが空前のバイクブームも長くは続かなかった。1980年代には高校生にバイク免許を取らせない、買わせない、運転させない、という「三ない運動」が展開され、若者を中心にオートバイ離れが始まった。

国内オートバイ市場は1982年の年間329万台をピークに減少し、2015年に40万台を切った。とりわけ落ち込みが激しいのは「原付第1種」として分類される排気量50cc以下の原付バイクだった。

日本自動車工業会の「2015年度2輪車市場動向調査」によると、2輪車所有者の平均年齢は52.9歳。20代以下の2輪車ユーザーは1割にも満たない。高齢化が深刻だ。

規制強化で原付バイクが窮地に

50cc以上のオートバイは昨年の販売台数が1980年に比べて5割減少しているのに対して、50cc以下は9割減と減少幅が大きい。ヤマ発の原付バイクの販売台数も、1980年の73万台から2015年は5万7000台まで減少している。

原付バイクの落ち込みが顕著な背景には、排ガスや安全に関する規制が年々強まっていること、ほかの移動手段が広がっていることなどがある。また、時速30キロメートル以下の法定速度や2段階右折といった50cc特有のルールも影響している。

従来から低価格で手頃な移動手段として親しまれてきたために、価格の制約も大きい。15~20万円程度を維持しながら、日々強化される規制をクリアするには、開発コストが見合わない。加えて近年では、日常の近距離移動手段として軽自動車や電動アシスト自転車と競合するようになっている。

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