米議会も総スカン、「TPPとん挫」の現実味 年内批准どころか先行きも見えない

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TPPに対しては、経済的にマイナスの影響があると懸念する低所得の労働者層からの抵抗がとりわけ強い。そこでホワイトハウスは、TPPの経済的側面ではなく、東アジアにおける中国の言動を抑えるカギになるとアピールする路線に転換している。アッシュ・カーター国防長官にいたっては、TPPはこの地域における米国の航空母艦群を増強するうえでの戦略的なカギを握るとまで言い切っている。

9月上旬にラオスで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議でも、オバマ大統領は「TPP推し」姿勢を崩さなかったようだ。同サミットには、TPPへの参加に同意している12カ国のうち、7カ国が集ったが、この席で記者団に簡単な状況説明を行ったホワイトハウス当局者によると、オバマ大統領はかなりの時間を割いて、米議会は11月の選挙の後に貿易協定について慎重に検討すると参加国に説明していたという。

ただし、オバマ大統領との思惑とは裏腹に、米議会は年内にTPPを採択するつもりは毛頭ないようだ。共和党のポール・ライアン下院議長は8日の記者会見で、現在の形ではTPP協定を承認するだけの十分な票が集まらないため、下院ですぐに議論を行うことはないと言及。翌日にも共和党下院議員に対して、オバマ大統領が下院で強硬採択を行うにはあまりに時間がないと話している(厳密に言えば、オバマ大統領は昨年、僅差で採択された貿易促進権限〈TPA〉法の下で強硬採択することは可能)。上院でも、共和党の重鎮である院内総務ミッチ・マコーネル氏が8月末時点で、今年中にTPPを採択する予定はないと発言している。

一方、民主党側も、下院院内総務のナンシー・ペロシ氏、上院院内総務ハリー・リード氏はともに長らくTPPに反対している。

こうした中、オバマ大統領は9月12日、年内における立法議案について話し合うために議会リーダー4人をホワイトハウスに招待。もっとも、この席での深刻な意見対立が、クリントン氏にとってさらなる大きな政治的支障にならないように、極めて慎重に話を進めたようだ。

クリントン氏を襲った2つの「想定外」

実際、オバマ大統領も、TPPをめぐる確執がクリントン氏の足を引っ張ることは望んでいない。ここ数カ月で支持率が急上昇しているオバマ大統領だが、自身の業績の「底上げ」にはクリントン氏の大統領当選が欠かせないことは熟知している。こうした中、9月13日にはペンシルベニア州フィラデルフィアで開かれたクリントン氏支持集会に足を運び(クリントン氏は体調不良で欠席)、「私は(クリントン氏を支持する)ふりをしているのではない。本当に、本当にヒラリーが次期大統領に選出されることを願っている」とする演説を行った。

皮肉なのは、オバマ大統領にとってTPPはアジア重視戦略における要の一つだったにもかかわらず、任期中の批准が微妙になっているどころか、国務大臣としてこれを推進したクリントン氏の足かせになってしまっていることだ。

こうした中、政治評論家たちは大統領選の年に、TPPの採択を行おうとしたこと自体が間違いだった、とする意見で一致しつつある。しかし、クリントン氏を囲む環境がここまで悪化した背景には、2つの想定外の事態が起こったことがある。

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