ウイダーinゼリー、「奇跡的巻き返し」の裏側 リニューアル「失敗」から得た教訓とは?

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従来の「エネルギー」「マルチビタミン」「プロテイン」という機能性を軸にした商品展開から、「エネルギー」(180キロカロリー)「カロリーハーフ」(90キロカロリー)「カロリーゼロ」(0カロリー)など、カロリー別の商品展開に切り替え、パッケージデザインも英字の多いものに一新した。

「カロリーハーフ」は、従来の「マルチビタミン」の品質を変えずに、名称とデザインを改めただけのものだったが、既存客の支持を失い大苦戦。リニューアルからわずか4か月後の7月には、再び「マルチビタミン」など機能性重視の名称に戻し、デザインも再刷新して巻き返しを図ることとなった。が、リニューアル失敗の影響は補えず、2015年3月期のinゼリーの売り上げは、前年に比べ約1割も落ち込んだ。

「失敗」が営業部隊を突き動かした

「放っておいても売れる」(同社)とされてきたinゼリーの失速は、森永製菓の営業部隊を突き動かした。

店頭のPOP広告で、水分補給やビタミン摂取といった健康効果を積極的に訴求。飲料売り場だけでなく、サプリメントの棚やマスクの近くなど、健康にひも付けたさまざまな売り場での販売を試みた。

一連の取り組みの成果か、前2016年3月期の売り上げは対前年で2割近く増加した。前年の落ち込みからの反動もあるとはいえ、inゼリーは息を吹き返したと言えるだろう。今2017年3月期の出だしも、前述のとおり3割近い伸び率となっている。来期以降の製造ライン増設も、検討段階に入ったという。

販売好調の「チョコモナカジャンボ」は森永製菓の看板商品。アイス市場の拡大も追い風だ(記者撮影)

今回、森永製菓は通期の業績予想を上方修正したが、下期(2016年10月~2017年3月期)だけでみると、期初の計画を据え置いている。第1四半期に想定以上に稼いだ利益は、販売促進費など今後へ向けた種まきに充てる考えだ。

とはいえ、inゼリーやアイスなど、同社の主力品は夏場に最需要期を迎える。例年、売上高や利益は、第2もしくは第3四半期に最も大きくなる。“稼ぎ時”に第1四半期の好調を持続できれば、再度の上方修正も視界に入ってくる。

森永製菓は、復活したinゼリーの余勢を駆って、さらなる高みを目指す。

中山 一貴 東洋経済 記者

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なかやま かずき / Kazuki Nakayama

趣味はTwitter(@overk0823)。1991年生まれ。東京外国語大学中国語専攻卒。在学中に北京師範大学文学部へ留学。2015年、東洋経済新報社に入社。食品・小売り業界の担当記者や『会社四季報 業界地図』編集長、『週刊東洋経済』編集部、『会社四季報』編集部、「会社四季報オンライン」編集部、『米国会社四季報』編集長などを経て2023年10月から東洋経済編集部(マーケティング担当、編集者)。「財新・東洋経済スタジオ」スタッフを兼任。

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