いい縁に恵まれる人は「瞬時の判断力」が違う 数値やデータだけで「人生の選択」は出来ない

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一瞬で「縁」があるか、ないかを判断するなんて、非科学的だと思われるかもしれません。でも、僕らはさまざまなことを「一瞬」で判断しているものなんです。

例えばテレビドラマの第1話の冒頭の1分間を見ただけでも、「おもしろい」か「おもしろくない」かというのは、だいたい判断できると思うんです。少なくとも評論家ではない一視聴者としては「このドラマは見よう!」「これは別に見なくていいや」ということを、一瞬のうちに判断しているわけですね。当然、1分間ではドラマのすべてを見たわけではありません。でもなんとなく「おもしろそうだな」「つまらなそうだ」ということを、私たちは感覚的につかんでいます。

この感覚を磨いていると、だんだんと「縁」をつかむ力が培われてきます。映画のポスターを見て、面白そうな映画か、そうでないかを瞬時に判断する。あるいはカフェや定食屋さんの前で、美味しそうか、いい店かそうでないかを判断する。

お店の外観には、その店のコンセプトが現れているのは当然のことですが、そこで働く人たちの毎日の時間が、積み重なっています。毎朝店のシャッターを開ける店長、出勤してくる店員、訪れる常連のお客さん……そうしたさまざまな人が織りなして来た時間が、店の外観にはにじみだしているんですね。

「類似性」への感度を上げる方法

これは、微細で、計量化するのが非常に難しい情報です。一つ一つは、何を意味しているのか、プラスなのか、マイナスなのかを判別することも難しい微細な情報が折り重なっている。でも、「似ている」「同じだ」という類似性の回路を働かせれば、一瞬にして「ここは自分にとって、縁のある場所かどうか」を判断できるようになってくるんです。

就職活動に臨む学生さんは、もちろん会社の基礎的なデータを調べることから入ってください。それは大切なことです。でも、それは「選ぶ」際の決定打にはなりません。きちんとデータを調べたうえで、最終的に「選ぶ」「決める」ために必要なことは、「その場に足を運んで、縁があるかどうかを判断する」ということなんです。

それは、いわゆる公式の「会社訪問」だけでは難しい。例えば朝、社員が出勤してくる時間帯を選んで、会社の周辺を散歩してみてください。何かを判断しよう、と身構えるのではなく、ただぼんやりと、会社の建物や、そこに出入りする人を眺めてみてください。

そういうことを繰り返しているうちに、ふとした拍子に「ああ、自分はここで働くのかもしれない」という感覚が降りてくる。そうしたらきっと、あなたは大切な決断で「迷う」ということが、少なくなってくるはずです。

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名越 康文 精神科医

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なこし やすふみ / Yasufumi Nakoshi

1960年、奈良県生まれ。精神科医。専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:大阪府立精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、99年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。
著書に『心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」』(角川SSコミュニケーションズ、2010)、『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。
夜間飛行よりメールマガジン「生きるための対話」刊行中。オフィシャルウェブサイトはこちら。twitterはこちら

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