「青春18きっぷ」ポスター制作の壮絶舞台裏 野犬にも追い掛けられ、ロケ地探しに一苦労

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1999年冬ポスターの舞台は予讃線・下灘駅。フィルムを装填しているのが故・真島氏(撮影:込山富秀)

1997年夏から旅情を感じさせる現在のスタイルが確立し、1998年夏から故・真島満秀氏が主宰する「真島満秀写真事務所」が撮影を担当することになった。猪井さん、長根さんは真島さんのスタッフとして撮影に参加した。その1998年夏ポスターを飾ったのは根室本線・落石駅付近の線路である。どうやって、この場所を見つけたのか。

「線路の上を歩いてロケハンすることはできないので、市販の“展望ビデオ”をスタッフで手分けして早送りで延々と見続けて、線路のラインと背景が美しい場所を探しました」と、長根さんが種明かしをする。「この場所はいいぞ」となると、巻き戻して線路はどの駅と駅の間にあるかを確認して、実際に行ってロケハンをするという繰り返し。しかも人里離れたこの辺の場所は熊や野犬が出没することも多く、撮影中に野犬に追いかけられたスタッフもいたという。

撮影中の大敵は野犬だけではない。2002年春ポスターの五能線・驫木駅。このときの撮影ではヘビに悩まされた。駅舎の中にはツバメの巣を狙うヘビがいて、撮影を行なう山に登ろうとしたら、やはりヘビがいた。長根さんが「ヘビだ!」と叫んだら、「猪井さんはギャグマンガで足がくるくる回るように、山を駆け登っていきましたね」(長根さん)。

大人気の「下灘駅」はどう撮った?

1999年冬の予讃線・下灘駅は今なお語り草となっている青春18きっぷポスターを代表する1枚。改札口の向こうに見える青い海が印象的だ。昨年出版された書籍『「青春18きっぷ」ポスター紀行』(講談社)の表紙にも使われている。

歴代のポスターは『「青春18きっぷ」ポスター紀行(講談社)』に収録されている。表紙は1999年冬ポスターの下灘駅。(上の書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

込山さんが1998年に下灘駅を訪れたときにこの景色を見て、都会の駅にこの下灘の改札口のポスターを貼ったら面白いだろうと思いついた。ただ、ここでも撮影はひと苦労。ホームに見える駅看板は海側を向き、改札口側は何も書いてなく無粋だった。そこで看板を改札口側に付け替えてもらって撮影した。逆向きに付けると、隣駅の表示が逆になってしまうのではないか。「そこはCGで処理しました」(長根さん)。込山さんも「”下灘”という駅名が少しだけ見えたのがとても良く、下灘駅が有名になるのに、ひと役買ったのでは」と言う。

撮影後に看板を元に戻したところ、下灘駅を訪れたファンから、「ポスターと同じ写真を撮りたい」という要望がJR四国に数多く寄せられたという。猪井さんが数年前に下灘駅を訪れたところ、看板が海側と改札側の両面に取り付けられていた。「JR四国さんも粋な計らいをするなあと思いました」。

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