日産ついに撤退か、車載電池で再編の号砲 日本勢が総崩れした液晶の二の舞は防げるか

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パナソニックは次の収益源として車載電池事業を目下育成中であり、米国のEVベンチャーである米テスラモーターズへの販売を強化するなどし、2018年度には事業売上高を4000億円まで拡大させる計画だ(2015年度は1800億円)。

合理的で知られるゴーン社長の脳裏には、冷静な計算も透けて見える

一方では、中国メーカーも有力視されている。大気汚染が深刻化している中国では、政府が環境対応車の普及に意欲的であるため、政府から資金的な後ろ盾を得た中国メーカーが競り勝つ可能性も考えられる。ルノーが議決権の43.7%を握る日産では、カルロス・ゴーン社長兼CEOはかねてから「QCD(Quarity :品質、Cost:価格、Delivery:納期)で調達先を決める」と言い切っており、日の丸電池に固執する公算は低い。

何より足元では電池メーカーも転換期を迫られている。

上位3社はいずれも低収益だが

2000年代前半まで、車載電池に使われるリチウムイオン電池の主要用途はパソコンだったが、その後スマートフォン(スマホ)が取って代わり、そのスマホもいまや成長が鈍化。次なる成長市場の電気自動車向けで受注を獲得すべく、電池メーカーによる開発競争が激化している。

リチウムイオン電池市場では、シェア1位のサムスンSDI(韓国)、2位パナソニック、3位LG化学(韓国)の3強が世界シェアの6割を占める。だが各社ともに、開発のための先行投資がかさみ、2015年度の各社の電池事業の業績は、サムスンSDIが赤字、パナソニック、LG化学も営業利益率0.1%以下という、厳しい状況だ。また、車載向けに投資を割く体力のないメーカーは、ソニーのように撤退を余儀なくされた。

EV市場が成長したとき、果実を得るのはどのメーカーか。汎用化への道は薄利多売ビジネスへの道でもある。規模を追いながらも、液晶産業の二の舞を踏まないよう、差別化が可能な技術開発が同時に求められそうだ。

                        (撮影:鈴木紳平)

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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