京浜急行、「水着美女ショー」電車の舞台裏 話題性だけではない「真面目」な事情とは

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列車が揺れてよろけそうになっても・・・

ただ、運賃収入を増やすことだけが京急の狙いではない。たとえば、三浦半島のまぐろ料理やレジャー利用がセットになった「みさきまぐろきっぷ」が大人気を博している。品川―三崎口間の往復乗車券とまぐろ料理の食事券、油壺マリンパークなどのレジャー施設券がセットになって大人料金が3060円。まぐろ料理とレジャー施設を利用するだけでも3000円程度はかかるので、京急にとっては乗車券分がほぼ持ち出しとなる。

海水浴シーズン中は、三浦海岸までの往復乗車券と海の家利用券とドリンク1本がセットになった「みうら海水浴きっぷ」も販売している。品川駅から乗車する場合の大人料金は1800円。子供は半額の900円。「みさきまぐろきっぷ」同様、海の家の利用料金などを考慮すると、やはり京急としては採算度外視なのだ。

将来は三浦半島に移住してほしい

次の瞬間には決めポーズ

ではなぜそこまでして、こうしたきっぷを売るのだろうか。沿線外から観光客を呼び寄せて沿線を盛り上げたいというのは確かに理由の一つに違いない。だが、それ以上に「沿線外から訪れて環境に気に入っていただいた人に将来移住してもらえれば」(京急)という思いがそこにある。

三浦海岸駅でモデルと参加者を下ろしたマーメイドトレインが回送列車として走り去った後、入れ替わるように次の電車がホームに滑り込んできた。ドアが開くと大勢の乗客が降りてきた。若いカップル、家族連れ。真夏の強い日差しの下、海水浴を楽しむためにやってきたのだ。自動車を使った海水浴は便利ではあるが、道路の渋滞に泣かされる。駐車場探しも一苦労だ。電車を使った海水浴も、もっと注目されてよい。

今回のマーメイドトレインは若い女性向けのイベントだった。次回はファミリー向けの「海水浴電車」をぜひ期待したい。ひょっとしたら乗車した子供たちが、将来大人になったら京急沿線に移住してくれるかもしれない。

(撮影:梅谷秀司)

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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