無料塾「八王子つばめ塾」が救う子どもたち 経済格差を教育格差にしない

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6月から教え始めたという福祉関連の学部に所属する大学3年の田中梓さん(20)は、「授業がない水曜日に、藤沢から通ってきています。休みを使って交通費をかけてきても、苦じゃないです」と、充実感いっぱい。

講師歴2年の公務員、瀬戸和史さん(29)は、「生徒の理解度がだんだん高まっているのがわかり楽しい」と週3回、3教室をかけ持ちして教えている。

「“困っている子のために”とかではなく“投資”だと思っています。今後、貧困格差が広がっていったら、子どもたちが働き盛りの年齢になったときに、日本全体の力が下がります。住みやすい社会にするために、今できることを」

そんな講師の思いを生徒とマッチングさせるために、小宮理事長は講師にこう望む。

「“生徒に寄り添ってあげる”ことだけです。隣で生徒が課題をひとつひとつこなしていくのを生徒の立場で励ましてあげられることが重要です」

安心して学習できる、返済不要の奨学金制度

実際、“貧困世帯”はどんな生活をしているのだろうか。経済難の母子家庭の中には、母親が病気や事故で働けなくなり、それまでは普通の暮らしができていたのに突然、家計が圧迫され貧困地獄に陥る子どもも多い。

スーパーでかき集めた野菜くずや油かすでその日の食事を凌ぐ子、プリクラ代やカラオケ代がなく友達付き合いにふたをする子。塾代以前に交通費やテキスト代すら払えないからと通塾を諦める子もいるという。つばめ塾に通う生徒の中にも、貧困にあえぐ子どもの姿が。

「お母さんが入退院を繰り返すようになり、弟や妹もいるので、登校前に牛丼店で働き、下校後にはガソリンスタンドでバイトをする高校生がいました。出費を抑えるためか、修学旅行にも行かなかった」

そう小宮理事長は、貧困のぬかるみがどこにでもある現実の怖さを訴える。そして「僕は自分の経験上、家計が苦しい家庭は、現金支給ほどありがたいものはないと思います」という考えから、返済不要の3つの奨学金制度を設けた。

交通費やテキスト代のほか中学3年生などには模試代や交通費を支給する『塾生奨学金』(申請すれば誰でも受けられる)、月額2万円の『大学生奨学金』(現在、1人の女子大生が受けている)、高校入学の際の教材費として1万円を支給する『高校生教科書奨学金』。

奨学金にかける意義を、小宮理事長が明かす。

「塾生の中には、“通いたいけど交通費がないから行けない”と悩む子もいます。また、最近は学校の授業も塾で習っていることを前提に進められる場合があり、通っていない子はどんどん置いてけぼりです。

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