日産がダイムラー、フォードと組んだワケ 燃料電池車の共同開発で戦略提携

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日産といえば、10年末に世界初の量産型本格EV「リーフ」を投入し、廃棄物ゼロ(ゼロエミッション)自動車市場の創出へ先頭を走ってきた。EVを当面のゼロエミッション車の主力と位置づけ、FCVは、次の世代の技術として開発を続けていた。

EVの市場拡大には手間取る

ただ、EV市場の世界的な立ち上がりがスローペースなことから、共同開発するトヨタ・BMW連合、独自開発を貫くホンダをはじめ、GMやヒュンダイなど世界の有力メーカーが、次世代自動車としてFCVへの傾斜を強めつつある。日本では、かねてトヨタ、ホンダが15年の一般販売を公表しており、日産もこれまで以上にFCV開発を促進させる方向に舵を切ったようだ。

FCVは、エンジンの代わりにFCスタックとモーターを積んだプラグインハイブリッド(PHV)車のようなもの。FCスタックや水素タンクといったFCV独特の装置開発がカギを握るのはもちろんだが、高効率なモーターや、FCで発電した電気を貯めておくリチウムイオン電池などの蓄電装置も、性能向上での大きな役割を担う。日産はEV事業を通じて電池や電動機構でノウハウを積んでおり、これがFCV開発にも有利に働くと目論む。

志賀俊之COOは、「目指すのは地球温暖化や資源・エネルギー問題が自動車の持続的な成長の負担にならないための技術開発。長期的に見れば、いずれ内燃機関では限界が来て、EVやFCVのゼロエミッション世界に入っていく。ハイブリッド(HV)、EV、FCVの対立ではなく、時代に必要な技術を導入していく。FCVは(EVに比べてシステムは大きくなるが)航続距離が長いので比較的大きな車にはFCVということがあろう。EVの得意なところ、FCVの得意なところをそれぞれ生かす」と語る。

(タイトル下の写真は、12年9月のパリモーターショーで公開したFCVのコンセプトカー「TeRRA(テラ)」)
 

丸山 尚文 東洋経済 記者

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まるやま たかふみ / Takafumi Maruyama

個人向け株式投資雑誌『会社四季報プロ500』編集長。『週刊東洋経済』編集部、「東洋経済オンライン」編集長、通信、自動車業界担当などを経て現職

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