マイナス金利で手数料!年金は減るのか 信託銀行が年金基金から手数料徴収
「信託銀行は受託者責任義務違反を問われてもやむなしだと思う」
ある大手年金基金の運用執行理事は、強い口調で信託銀行への批判を繰り返した。
発端は3月28日。その年金基金に、ある大手信託銀行から通知が届いた。タイトルは「日本銀行のマイナス金利政策導入に伴う信託事務費用のご負担について」。
要するに、日銀がマイナス金利政策を導入したために、信託銀行に追加的な費用が発生。ついては、その費用を年金基金のほうで負担してほしい、という通知だ。
費用負担なら年金受給者から訴訟?
通知の文面やタイミングに若干の違いはあっても、信託大手4行(三井住友信託銀行、三菱UFJ信託銀行、みずほ信託銀行、りそな銀行)はいずれも、同様の対応を年金基金に求めている。
冒頭の年金理事はこの通知に対して怒っているのだ。「どうして年金基金が費用を負担しなければならないのか。それを負担してしまったら年金受給者からの損害賠償責任訴訟が起きかねない」。
信託銀行の言い分はこうだ。年金は通常、株式や債券などで運用されている。しかし、年金保険料は現金で入ってくる。支給も現金で行う。株や債券に投資する直前の待機資金も現金。つまり、ある程度の現金は、つねに余資として持っている。
それらを今までは短期金融市場で運用していた。コールローンやCP(コマーシャルペーパー)などだ。しかし、マイナス金利政策導入で金利がゼロ近辺に沈み、コールローンやCPの資金の取り手が急減。短期市場での運用が極めて困難になった。
そのため、年金信託の余資の大部分は、信託銀行の銀行勘定を通じて、日銀当座預金に滞留することとなった。それらは日銀のマイナス0.1%金利の対象で、費用が発生する。この費用を年金基金に負担してもらおうというのが信託銀行の考えである。
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