横浜ゴム、買収は割高でも「ラッキー」だった どうしても手中に収めたかった理由とは?

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3月25日、横浜ゴムはアライアンス社の買収を発表。さらに欧米市場を伸ばせるか

国内3位のタイヤメーカーである横浜ゴムが1356億円もの大型買収を決断した。傘下に収めるのは農機や林業用タイヤに強い蘭アライアンス・タイヤ・グループ。課題だった建機や農機向けの生産財タイヤを拡充し、念願の景気に左右されない事業を手に入れる狙いだ。

アライアンス社は本社をオランダに置く。イスラエルとインドに製造拠点があり、主に欧米市場に強い地盤を持つ。年商600億円規模の中堅メーカーで、横浜ゴムにとって重要だった点は、これまで同社が手掛けていなかった農機や林業用タイヤに強い点だった。

横浜ゴムが得意とし、タイヤ事業の8割を占める消費財タイヤは景気の影響を受けやすく、価格競争も厳しい。残る生産財タイヤも大半はトラック・バス用タイヤ。「オフハイウェータイヤ」と呼ばれる、鋪装されていない悪路を走る車用のタイヤはほとんどなく、ここが課題だった。

前期の営業減益で見えた課題

実際、2015年12月期決算は営業利益が545億円と7.7%の減益となった。苦戦の要因は乗用車用タイヤの厳しい価格競争だ。中国、韓国から安いタイヤが大量に出回り、値崩れが生じたからだ。一方、業界4位の東洋ゴムは北米での生産が立ち上がったSUV用タイヤがピックアップトラックなどの需要増もあり絶好調。営業利益は33%増の633億円と横浜ゴムを上回った。こうした差からも、横浜ゴムの課題は明確だった。

そこで目をつけたのが、蘭アライアンス社だ。同社が強みを持つ農機用タイヤは景気変動の影響を受けにくく、グローバルの農機市場は2019年まで5%以上の成長が続く予測もある。「リーマンショック後も農業用タイヤは対前年比でマイナスにならなかった。景気に左右されないものを事業に取り込むべきと考えた」(横浜ゴムの南雲忠信会長)。

安定した成長性に加えて、高い収益性とブランド力も魅力だった。2015年12月期の売上高は5.2億ドル、営業利益は9500万ドル。営業利益率は18%に達する。横浜ゴムの前期実績は8.7%。収益性向上につながる買収でもある。

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