米国が日本を見捨てて中国と組むことはない--ジョセフ・S・ナイ ハーバード大学教授

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 日本に対するアメリカの核抑止力の保証は、日本に駐留する約5万人の米軍の存在にある。信頼は大陸間ミサイル防衛の開発などの共同プロジェクトの実施で強化されている。

同様に重要なことは、アメリカが同盟国を重視していることを示し、アジア政策で日本を素通りするような政策をとらないと保証することだ。これが、クリントン国務長官が最初に日本を訪問した理由である。同じく、米中関係において、多角的な協力関係ではなく、2カ国だけのG2を推進することは誤りである。

ジャパンパッシングが杞憂である2つの理由

二つ目の課題は、中国経済の急速な台頭である。中国は重要な貿易相手国であるが、日本は中国のパワー増大に神経質になっている。90年代に日米安保条約の再交渉が行われたとき、日本の指導者たちは「米国は中国を優先して日本を捨てるのではないか」と個人的に質問してきた。

そのとき(現在でもそうだが)、私は「そうした懸念はない」と答えた。

その理由は二つある。まず、中国はアメリカにとって潜在的な脅威であるが、日本はそうではないこと。もう一つは、アメリカと日本は民主主義の価値観を共有しているが、中国は民主国家ではないことだ。

さらに、中国の国内情勢の行方は依然として不透明である。中国は歴史的に見ればはるかに自由になっているが、政治制度の改革は経済的進歩よりもはるかに遅れている。中国は国民の政治参加の問題をまだ解決していない。中国が国内問題を押さえ込むためにナショナリズムに訴える危険性はつねに存在している。

同時に中国の台頭が、中国の指導者が言うように、平和かつ調和的なものであれば、日米中の3カ国の利益にかなう。これが、中国を世界へ統合させる戦略をとるとともに、不確実性に対するヘッジを行うことが、日米両国にとって意味がある理由である。ここに日米中による協力や他の地域的協力に取り組む根拠が存在する。

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