「鉄旅ツアー」が人気化しているホントの理由 ファミリーや女性など新しいファン層を開拓
そもそも、“鉄道の旅”というものは、いわゆる旅行代理店による旅行商品としてはやや難しい一面がある。もちろん、修学旅行や社員旅行などの団体旅行で団体臨時列車を運行させる場合は旅行代理店の仲介が欠かせないし、今回の鉄旅オブザイヤーでも紹介された583系寝台列車の活用なども旅行代理店の真骨頂だ。
しかし、幅を広げて“鉄道の旅”として考えてみると、青春18きっぷよろしく「時刻表を読み込んで緻密な計画を立ててひとり普通列車を乗り継いで…」というイメージも強い。こうした鉄旅と行程がかっちりと組み上がっているツアー旅行は相容れないものだ。
鉄道ファン歴30年という40代の男性は、「よほどの事がない限りツアーなどの旅行商品を利用することはない」と断言する。
「“鉄旅”の一番の魅力は、やっぱり時刻表を見てプランを組み上げていくこと。特に本数の少ないローカル線をどれだけ効率的に乗り継いで行くのかを考える時間は至福ですね。でも旅行会社のツアーだとそれがなくて行程が決まっているので自由もない。よほど珍しい列車に乗れるならまだしも、普通は利用しようとは思いませんよ」
一方で、鉄道ファンではない人にとってはどうか。旅行好きという40代の女性は「鉄道は飛行機などと同じで旅の目的地への交通手段。乗ることそのものは目的にはなりにくい」と語る。こうした声も少なくないはずだ。
いずれにせよ、鉄道に乗ることそのものが目的となる“鉄旅”は、旅行商品にはなかなかそぐわないということだ。
旧来と違う「鉄旅」ファン増加
ただ、こうした旧来からの鉄道旅行に対して、ここ数年、鉄道に乗ること自体を目的とする旅を求める人の層が広がっているようだ。実際に大手旅行代理店も「鉄道旅行が見直されつつある」と話す。
「ここ数年、鉄道が目的とする旅行プランの人気が高まっています。消えゆく寝台列車や新たに開通した北陸新幹線を利用するプラン、さらには観光列車を利用するプランなどが特に人気ですね」(JTB広報室)
実際に「ななつ星」のJR九州をはじめ、全国の鉄道事業者が数多くの観光列車が登場している。ローカル線はもとより、JR東日本・西日本もトワイライトエクスプレスやカシオペアに変わる豪華寝台列車の投入を進めているし、大手私鉄各社も積極的な姿勢を見せている。これらの多くはツアーなどの旅行商品との親和性も高い。
そして、こうした“鉄旅人気”を支えているのはこれまで鉄道旅行を楽しんできたいわゆる“鉄道ファン”ではない。
「小さい子供のいるファミリーや年配のご夫婦などに加えて、若い女性グループなどの参加も増えています。のんびりと走る列車の中でおいしい料理を食べて美しい車窓を眺める。そんな女性でも楽しめる観光列車が増えたことが大きな要因」(JTB広報室)という。
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