「高橋財政」に学び大胆なリフレ政策を--昭和恐慌以上の危機に陥らないために
底入れ感が出始めているとはいえ、日本経済はなお未曾有の危機の中にある。2008年4~6月期から4四半期連続でマイナス成長、特に09年1~3月期は前期比マイナス4%成長、年率換算でマイナス15・2%成長と、戦後最悪の大不況に陥っている。
政府は経済危機対策の一環として15・4兆円規模の財政支出増を決めた。だが、これは失業率を過去最悪の5・5%程度にとどめることを目標としており、今後急速に増大が予想される失業を食い止めるには十分ではなく、雇用問題の深刻化は避けられないであろう。
もちろんGDPギャップのすべてを財政支出で補う必要はない。昭和恐慌を上回る平成大恐慌となることを未然に防ぐために必要なのは、以下に述べるような、政府が考えるよりも大胆なリフレーション政策(以下、リフレ政策)である。
リフレ政策ではなかった量的緩和
リフレ政策の中心は貨幣ストックを大幅に増加させることである。日本銀行は01年3月から06年3月までいわゆる「量的緩和」を実施した。しかしこの政策で日銀が目標としたのは貨幣ストックの増加ではなく、一定の日銀当座預金残高の維持であった。よく誤解されるのだが、当座預金残高の維持だけでは市中に回る貨幣ストックは増えない。増やすためには、銀行が国債不足に陥るほど大量に、日銀が国債を買い取る必要がある。銀行が国債不足に陥れば、銀行は民間非銀行部門から国債を買って不足を補おうとする。これによって初めて、貨幣が民間の非銀行部門に供給される。
しかし、当時の国債発行額に占める日銀の国債購入増の比率は、量的緩和開始当初の01年こそ67%と高かったものの、03年以降は18%、3%、10%にとどまった。そのため、貨幣ストックは5年間で11%しか増えなかった。要するに「量的緩和」はリフレ政策ではなかったのだ。
なぜ日銀はかくもリフレ政策に消極的なのか。データを虚心坦懐に眺めれば、日銀の目標は実は「ゼロインフレ」であることがわかる。06年3月から09年3月までの3年間の平均インフレ率は、総合で0・3%、生鮮食品を除くと0・2%、食料とエネルギーを除いたコアインフレ率はマイナス0・4%。日銀のいう「物価の安定」とはゼロインフレのことだとしたら、つじつまは合う。