今、株価が上昇する理由は見当たらない FOMC声明に失望、日銀も身動きが取れない

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過去には1920年や1932年のように32.9%、23.1%とそれぞれ下落したときがあり、直近でも2000年の6.2%、2008年の33.8%の下落がある。万が一、共和党候補にトランプ氏が選出され、さらに大統領に就任するような事態になれば、米国株は暴落するだろう。米国株は昨年12月の利上げにより、もともと上昇しづらい状況にある。その上にこれらのデータがかぶさってくる。そのため、今年の米国株の上昇は期待しないほうが賢明であろう。そうなれば、日本株だけが上昇するというような楽観的な見方はできない。

日本株の主たる投資家は外国人投資家であり、その多くが米国からの投資である。昨年夏場以降、外国人投資家は現物・先物を売り越している。いったん手放した株をすぐに買戻すことはしない。一年程度は見送るのが常識的な投資行動である。そう考えると、日本株の買い手は国内の投資家が主体となる。このような状況で、日本株が上昇に転じるのは難しい。

2月は再び下押し圧力高まる懸念

株価上昇を期待するのはいいが、残念ながら、上昇する理由はいまのところ見つからない。日経平均株価の1万6000円は短期的には底値である。しかし、現在の企業業績予想からみたバリュエーションでは割安感はない。逆に業績が下方修正されれば、むしろ割高になってしまう。そうなると、市場の期待は日銀による追加緩和しかない。しかし、ECBの追加緩和は早くても3月であり、FRBも次回会合で利下げへ政策変更を行う可能性はきわめて低い。そうなると、日銀も28・29日の金融政策決定会合でフライング気味に追加緩和を実施することは難しい。つまり、3月14・15日の次回会合までは、身動きが取れないだろう。

その結果、3月中旬まで株安基調が続く可能性がある。日経平均株価は1万6000円を割り込んでしまうと、非常に厳しい下げになることが予想される。ちなみに、今回のような急落後に底値から一日で大幅に値を戻した場合、数日の小幅な上昇の後に新安値をつけるケースが多い。このチャートパターンは、ブラックマンデー、リーマンショック、昨年のチャイナショックでも見られている。今回も同じような戻りの動きが見られており、同様に二番底を探る動きになる可能性が高まっている。いまは安易な押し目買いは避けるべきだ。

週明けつまり月が替われば、再び下押し圧力が強まると考えている。その場合、日経平均株価が1万4500円で下げ止まるかを注視したい。

江守 哲 コモディティ・ストラテジスト

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えもり てつ / Tetsu Emori

1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事入社。2000年に三井物産フューチャーズ移籍、「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場分析および投資戦略の立案を行う。2007年にアストマックスのチーフファンドマネージャーに就任。2015年に「エモリキャピタルマネジメント」を設立。会員制オンラインサロン「EMORI CLUB」と共に市場分析や投資戦略情報の発信を行っている。2020年に「エフプロ」の監修者に就任。主な著書に「金を買え 米国株バブル経済の終わりの始まり」(2020年プレジデント社)。

 

 

 

 

 

 

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