ストレス耐性のカギは「体との対話力」にある 体の変化に敏感な人はストレスに強い

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ところが、レジリエンスが低いと判定された人たちは、特殊部隊の兵士たちの脳とは正反対の働きをした。フェースマスクが閉まり始めても、体からのシグナルをモニタリングする領域の活動は極めて低調だったのに、呼吸が苦しくなると、生理学的な興奮を高める脳の領域が非常に活発に活動し始めたのだ。

つまり彼らは、呼吸が困難になるまでは、心拍数の上昇といった体のサインにほとんど注意を払わず、具体的な脅威が生じると反応(しかも過剰反応)を示した。こうした脳の反応の仕組みが、体が冷静な状態に戻るのを難しくし、レジリエンスを低下させるのだと、研究チームは結論を下した。

知的な人がストレスに強いとは限らない?

もちろんこの研究は、レジリエンスに関する被験者自身のアンケート調査と、脳の反応を見る1度だけの実験に基づいており、人によって脳の反応が異なる理由や、パニックに陥りやすい人が「ストレスに強い脳」になる方法はわからない。

だが、結果そのものには説得力があると、ハースのチームは考えている。「この研究は、レジリエンスのカギは体の(変化に対する)気づきであり、合理的な思考の持ち主かどうかは関係ないことを示している」と、研究に参加したローリャト脳研究所(オクラホマ州)のマーティン・ポーラス科学部長は言う。「知的な人も、自分の身体に起きていることにきちんと耳を傾けないと、逆境からすばやく立ち直れないかもしれない」。

体内のコミュニケーションは、毎日、意識を集中した呼吸を数分するといった、シンプルな訓練で高まる可能性があると、ハースは言う。息を吸ったり吐いたりすることに、静かに意識を集中するのだ。

それをしばらく続けると、「心配なことが起きたとき呼吸を変えること、しかしその反応に引きずられないことを教えてくれる」はずだと、ハースは言う。「そうすれば、ストレスフルな状況に対する自分の反応を改善できるかもしれない」。

(執筆:GRETCHEN REYNOLDS記者、翻訳:藤原朝子)

© 2016 New York Times News Service

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