静岡鉄道の新型電車が「虹色」になったワケ 富士山やイチゴ、ミカン…「ご当地の7色」

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「7色の電車」は、それ自体特に新しいわけではない。たとえば、東京の京王電鉄井の頭線は昔から編成ごとに異なる7色の電車で親しまれている。富山県の富山ライトレールも、7編成の色違いの電車が走っている。静鉄の7色が目新しい点は、それぞれの色に「静岡が誇るいろんな一番」というテーマを持たせた点だ。

最初は、毎日の足である電車ということで、月曜から日曜までの「曜日にちなんだ7色」といった案もあったというが「地域が発展しなければ成り立たないということを考えると、やはり『地元の一番』がしっくりくる」(吉林さん)として、「静岡だけの特別な虹」がコンセプトとなった。

このため、色も一般的な「虹の7色」とは少し違っている。虹の7色といえば一般的には赤・オレンジ・黄色・緑・水色・青・紫の配色だが、静鉄の7色には「紫」は存在しない。地域で「紫色で一番のもの」がなかったからだ。色の選定を進める中で、実は地域に「さまざまな一番」があったことに気づいたと吉林さんはいう。7色のカラーリングには、これから毎年1〜2本ずつ登場する新車に合わせ、地元の一番を知ってほしいという願いも込められている。

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静岡鉄道には数多くのラッピング電車が走っている。「ちびまる子ちゃん」のラッピング電車は観光客に人気だ

7色の電車を導入することで、車両の広告でも新たな展開が考えられるという。現在、静鉄には多くのラッピング電車が走っている。7色のカラーリングを施すと、車体全体のラッピング広告などは難しくなるが、たとえば広告主のコーポレートカラーに合わせた車両の広告ジャックなど「色にちなんだ広告展開ができればラッピングとは違った展開もできるのでは」と吉林さんは構想を語る。

虹色の未来は開けるか

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新静岡駅の商業施設「新静岡セノバ」の前に設置されたカウントダウンボード

40年ぶりの新型車はPRにも力を入れ、特設のwebサイトを開設してイメージムービーも2本公開しているほか、新静岡駅の商業施設「新静岡セノバ」の前には運転開始までの残り日数を表示するカウントダウンボードを設置。駅の待合室には7色の模型車両が並ぶ。

乗客減少などの話題が多い全国の地方鉄道。その中にあって「優等生」といえる存在の静鉄は、近年の利用者数はほぼ横ばいで推移している。

だが、同線が走る静岡市の人口は減り続けており、政令指定都市の中では最も少ない約70万人だ。人口減に歯止めがかからない中、地域の「一番」をまとった新型車両は、鉄道だけでなく街の活性化にも結びつくだろうか。「虹色の未来」へ向け、新型車第1弾となる「クリアブルー」の編成が運転を開始するのは今年3月24日の予定だ。

 

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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