外国人の「不法就労」が今でもやまない深刻実態 労働者を食い物にする悪質ブローカーも存在

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外国人労働者に頼らざるをえない日本の製造現場では不法就労の事例が報告され続けています。写真はイメージ(写真:Fast&Slow/PIXTA)

「太田市や大泉町のような外国人労働者が多い群馬の地域では、企業の社長からこんな相談を受けるんです。『在留カード、パスポート、ビザ。この3つがそろっていなくても、外国人を雇う方法はないのか』と。

つまり正式なルートでない方法で安い労働力を確保できないか、ということを暗に尋ねられているわけです。こういった驚くべき“相談”が2019年だけで1500件近く寄せられているというのが現実です」

そんな証言を聞いたのは、群馬県太田市の取材をしているときだった。太田市で行政書士業を営む、山田さん(仮名)が続ける。

「とくに問題視しているのがベトナム、ネパール、インドネシアといったアジア圏からの特定活動をベースとした在留資格を保有していると“される”人々。特定活動に関しては、風俗営業以外は例えば調理師や清掃など、決して高くないハードルで許可が下りてきた。

特定活動での在留資格が欲しい人たちに向けた裏組織は多く、平然と在留資格の偽造や書き換えも行われている。多くの外国人労働者は違法だとわかっていても、働き口を探さないといけない。企業側は安いお金で労働力を雇いたい。双方の利害はマッチしているわけです。

給料を手渡しだったり、別の人に振り込む形で、間接的に賃金を支払ったり。結局ほとんどは派遣会社(人材紹介会社)を経由しており、直接雇用ではなくて、間接雇用なわけです。企業側は派遣会社の責任で、知らぬ存ぜぬで押し通せる。不法就労の外国人ばかりやり玉に挙げられる風潮がありますが、企業側の責任も極めて大きく、改めて考えるべきタイミングが来ています」

正規ルートから外れた不法就労も後を絶たない

不法就労の外国人を雇用していた経営者は、出入国管理法(入管法)違反で3年以下の懲役や300万円以下の罰金刑に処せられる場合がある。日本国内でも不法就労助長の疑いで人材派遣会社の社長が逮捕される事例が相次ぐ。なぜこんな状況がまかり通っているのか。

前編(『群馬の小さな町が直面し続ける移民流入の現実』)では、全国有数のブラジル人タウンである大泉町に大量の移民が流入している影響について詳細をつづった。大泉町のような移民が多い地域では、語学、納税、生活保護、日本人社会との共生といったさまざまな問題が浮き彫りとなっている。

だが、これらはあくまで正式な許可を経て居住している人々の話だ。冒頭の発言のように、本来なら在留資格を持たず、労働資格がない状態での“闇労働”も横行している。彼らの活動を後押しする偽装や書き換えを行う国内外のブローカーは後を絶たない。

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