【産業天気図・ガラス/セメント】ガラスは欧州需要と液晶用が牽引し「晴れ」に。セメントは原料高と償却負担増などで「曇り」続く

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07年度後半は、ガラスとセメントでやや明暗が分かれる格好になる。建築用ガラスの好況に沸き立つ欧州市場に引っ張られる日本板硝子<5202>、同様の欧州需要に加えて急成長する液晶用ガラスにも牽引される旭硝子<5201>など、主要ガラス各社は過去最高益の業績となりそう。欧州のカルテル疑惑に関する巨額の制裁金リスクについても、解消したわけではないが、少なくとも今年度は潜在リスクのままとどまりそうで、天気は前回の「曇り」から「晴れ」となる。
 一方、セメントは業界首位の太平洋セメント<5233>、3位の住友大阪セメント<5232>はそろって営業減益予想のため、天気は前回同様「曇り」。08年度前半は、再び両業界とも「曇り」になる模様だ。
 建築用ガラスの国内向けは、住宅着工数の減少と燃料費上昇に伴う価格改定が進まずに依然厳しい状況が続く。対照的なのが欧州市場。中でも建築用ガラスは活発な需要に後押しされて価格転嫁が進んでおり、数量は伸びていないが単価アップで30%近く前年同期比営業増益になっている。昨年6月に英国の大手ガラスメーカー、ピルキントン社を買収した日本板硝子は、今期ピ社がフル連結(前期は第2四半期から)になったことに加えて期初想定よりも円高ポンド安になったことが、業績を押し上げる。
 ベルギー・グラバーベル社を傘下に擁する旭硝子も、同じように欧州好況を享受する。さらに旭硝子は、液晶用ガラスの新専用窯が韓国と台湾で相次いで立ち上がり、04年の生産能力に比べると今年末には3倍となる。テレビ、モニターのブラウン管から薄型ディスプレーへの移行は急加速しており、価格下落も緩やかなことから供給能力増が利益増に直結する見通しだ。
 今春にEU(欧州連合)の欧州委員会から、ピ社とグ社が自動車用ガラスと建築用ガラスのカルテル疑惑の通告を受けた。ピ社は前年度に推定制裁金として約800億円の引当金を計上、連結する日本板硝子は資産の目減り分を加えたのれん代を20年で償却する対応策を実施。さらに今年夏、ピ社の豪州ガラス事業を売却して、制裁金額に近い売却金を掌中にした。一方、旭硝子は「現段階では合理的な引き当て価格の算定が難しい。引き続き十分な検討を行い、何らかの数値が算定でき次第、適切な処置をとる」(松沢隆副社長)として、今期見通しには含めなかった。カルテルについては審査中で、結論が出るのは年明け以降になる見通し。12月決算の旭硝子は、少なくとも記念すべき創業100周年に当たる今年度決算で推定過料を計上することだけは避けられそう。もっとも、潜在リスクが次年度に先送りされただけで、欧州の建築用ガラス需要も徐々に減速してきていることが加わって、ガラス業界の天気も「晴れ」から08年度は「曇り」へと変わる。
 一方、セメント各社は、燃料となる石炭の価格上昇と制度変更に伴う減価償却費用の増大に頭を抑えられた格好で、営業減益を予想。太平洋セメントは、牽引役でもある米国事業の好調が上期までは続いているが、米国ではサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題に端を発した信用収縮から経済の下振れまで懸念されているだけに、このまま好調さを維持できるかはかなり不透明だ。住友大阪セメントは、本業のセメントは期初計画を上回る状況で推移しているものの、前期赤字のPDPフィルム事業の止血が予定通りできるかが課題だろう。
【鶴見 昌憲記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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