実質賃金の低迷と物価高の進行により、経済状況が著しく悪化し、税と社会保障の負担の公平性が感じられないような仕組みに対する不満が限界を迎えると、互恵性が崩壊した「世代間闘争」の様相を呈する可能性がある。「相互扶助」から「ゼロサム・ゲーム」へと暴走する危険性だ。
「世代間」ではなく「価値間」に境界線を引いた
今回の選挙では、感情をあおるタイプのポピュリズムや、消費税廃止などの人気取り政策を掲げたポピュリズムよりも、「今の生活をどう具体的に改善するか」について、データで示しながら次世代への責任を訴えるチームみらいのようなアプローチが、現役世代の票を吸い上げた格好となっている。
チームみらいの躍進は、ポピュリズムに特徴的な「自分たち(現役世代)vsあいつら(既得権益)」という境界線を抽象度の高い形で引き直したところにある。チームみらいは、「未来への投資」という旗印の下、この境界線を「年齢」ではなく「未来を向いているかどうか」という抽象的なメッセージに変換し、旧来型のポピュリズムを嫌う多くの無党派層を取り込むことに成功した。
「世代間」ではなく「価値間」に境界線を引いたのである。とはいえ、分断の助長という根本的な問題が解決されるわけではない。現役世代において、赤の他人の高齢者を支えるために給与から「必要以上にお金が取られている」意識が根強く、他方、高齢者のほうも、現行の制度を是が非でも死守したい「当然の権利」と痛切に感じているのであれば、トレードオフ的な認識の外に出ることはできないだろう。
筆者は、今回の衆院選をポピュリズムの多極化への転換点と考えている。右派ポピュリズム政党(参政党、日本保守党)、左派ポピュリズム政党(れいわ新選組)、中道ポピュリズム政党(国民民主党)、テクノポピュリズム政党(チームみらい)というふうに便宜的に分けてみると、欧州などに一回り遅れる形で多様なポピュリズム運動の波が到達したのである。
もちろん、このようなポピュリズムのマルチレイヤー化によって、選択肢が広がる一方で、分断が加速する可能性がある。なぜなら、双方のポピュリズム運動で対話が困難となれば、建設的な議論ができなくなるからだ。そもそもポピュリズムには、自分たちこそが「真の国民」の代弁者であるという自己アピールがある。チームみらいは、それを「ブロードリスニング」というデジタル技術で正当化した。
「真の国民」を「現役世代」という言葉に置き換えたのは、国民民主党であるが、すでに各党ともに特定の階層を代表する政治主体として機能し始めている面があるといえる。シルバー民主主義とその庇護者(現役世代の負担増に冷淡な政治家やエリート)が敵と設定されることが多いが、ここにテクノロジーという新たな要素が加わることによって、日本の政治も別のフェーズに突入しつつあるとみてよいだろう。
チームみらいの台頭と中道改革連合の没落は、政治をこれまで以上に実利的な課題として国民が捉えている昨今の現状を示すとともに、民意との接続方法が有権者の信頼性を取り戻す重要なポイントになっていることを明らかにした。多様なポピュリズム政党が出そろった今、わたしたちの見識が問われている。
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