完全週休2日、校務分掌を大幅削減…「子ども主体の学び」実現の両輪で必要だった"本気の働き方改革"《カリキュラムで勝負する横浜創英》の現在地

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関心のある科目を選択できるようになったことで、自分の将来に向けたキャリア形成に早い段階から取り組むことができるようになるわけだ。大学入試で人物を評価する総合型選抜の比重が増してきている中では、入試にも効果的なカリキュラムになる可能性もある。

もちろん大学入試のためのカリキュラムではないので、「大学に進むかどうか別にして、映画づくりに興味のある生徒は、それに関する自由選択科目を選んで、将来は映画界入りするために役立てればいいわけです」と、本間氏は言う。

ただ、自由選択科目の幅が広がると、そのための授業準備に追われて教員は忙しくなり、余白どころではなくなってしまうのではないかと考えてしまう。それに対して本間氏は、「授業準備は必要ありません」と言って笑った。授業準備をせずに教員が楽になるという意味ではなく、教員の役割が変わるのだ。

「探究型、生徒主体の授業のため教員は寄り添うだけ。授業を主導しないので準備をする必要もありません。今までの学校は一斉授業による知識の伝達に追われすぎていたので授業準備が必要でしたが、AIも利用しながら生徒は自主的に学んでいくので、それを教員は後ろから支えていけばいいのです」と、本間氏。生徒主体の授業スタイルは自由選択科目だけでなく、必履修科目でも同じである。そして、中学でも行われている。

これらの働き方改革によって横浜創英では、労働基準法で定められている時間外労働(残業)の上限である「月45時間、1年360時間」を超える教員はいないという。これは給特法による公立学校教員の時間外労働の上限ガイドラインでもあるが、これを超えている公立中学校教員は8割近くにもなっているのが現状でもある。

それでも、学びを生徒主導に移譲することは、教員が授業を主導する従来のやり方に慣れてきた教員には難しい。にもかかわらず横浜創英で実現できたのは、働き方改革を通じて教員が自分の時間に余白をつくることの重要性に気づくことができたからである。

これまでの一斉授業では、教員が先頭で引っ張るのでかなりの授業準備も必要だが、生徒主導の授業では教員は後ろから生徒を見守り、進む方向を修正したりなど支援するという従来とは違う役割になるので授業準備に追われることもない。もちろん、教員が楽になるということではなく、そこでは教員の能力が問われてくるに違いない。本間氏も、「働き方改革を先にやっていたからこそ、カリキュラム改革ができたのです」と言った。

次は中学のカリキュラム改革

ここまで説明してきたのは、高校におけるカリキュラム改革である。高校と違って標準授業時数を学習指導要領で決められているため、中学では難しい。中学について訊ねると、本間氏は次のように答えた。

「次の学習指導要領で検討されている『調整授業時数制度』では、標準授業時数の範囲内で一定割合を柔軟に運用できるようになります。この制度によって、これまで小規模な改編にとどまってきた中学校の教育課程についても、『高次な資質・能力』を育成するための大胆なカリキュラム編成が可能となります。高校でのカリキュラム改革を先行してきた経験を活かして、次は中学校でも子どもたちの学びと社会をつなげるカリキュラム・マネジメントを構築していきたいと考えています」

働き方改革とカリキュラム改革は、待っているだけでは実現できないことを横浜創英は教えているようだ。そして、「カリキュラムで勝負」する横浜創英は、先駆的な存在でありつづけるのかもしれない。

東洋経済education×ICTでは、小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。
前屋 毅 フリージャーナリスト

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まえや つよし / Tsuyoshi Maeya

1954年、鹿児島県生まれ。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。著書に『学校が合わない子どもたち』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』(朝日新聞社)、『ほんとうの教育をとりもどす 生きる力をはぐくむ授業への挑戦』(共栄書房)、『ブラック化する学校 少子化なのに、なぜ先生は忙しくなったのか?』(青春出版社)、『教師をやめる 14人の語りから見える学校のリアル』(学事出版)など。

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