「失われた20年」と日本経済 構造的原因と再生への原動力の解明 深尾京司著 ~問題は生産性にありとデータで精緻に分析

それでは、どのような投資を増やすべきか。先進各国では生産性向上に情報通信技術(ICT)投資が大きく寄与しているが、日本では不足している。ICT投資の果実を得るには、組織変革や人的資本の蓄積など無形資産投資が不可欠だが、それが十分ではないため、ICT投資は収益性が低いと判断されているのだろう。ICT投資の支援だけでなく、企業内職業訓練の促進や労働市場改革など無形資産投資の促進も必要である。生産性問題は、組織や労働の問題と密接に結びついている。

大企業製造業は高い生産性上昇率を維持しているが、工場を海外に移転し、雇用も減らし、経済全体の生産性向上にはつながっていない。国内でイノベーションを進め、雇用を創出しているのは、若い独立系企業や外資系企業である。経済の新陳代謝を進めるとともに、国籍を問わず、生産性の高い企業を国内に呼び込むことが不可欠で、法人税減税や自由貿易協定の推進が効果的である。

評者は、著しい生産性上昇で長年、日本にデフレショックをもたらしてきた中国がついに「ルイスの転換点」を超え、早晩、実質為替レートの本格上昇が始まると推察している。本書では中国の為替問題についても興味深い分析が行われている。

ふかお・きょうじ
一橋大学経済研究所教授。1956年生まれ。東京大学経済学部卒業、同大大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。米イェール大学客員研究員、伊ボッコーニ大学客員教授、内閣府経済社会総合研究所客員主任研究官などを経る。

日本経済新聞出版社 4410円 321ページ

  

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