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ソニー、パソコン覇権戦争で「MSX」が不発に。松田聖子のCMは評判も、パソコンとしては"中途半端"

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平松は誰もいない夜のオフィスで、マテルに事前打ち合わせの電話をするため西海岸が朝になるのを待っていた。午後9時に電話が鳴った。マテルからではない。受話器の向こうからは聞き覚えのある声がした。

「おお、まだいた」

声の主は井上基。元ソニーのアメリカ駐在員で、海外担当の平松とは顔見知りだったが、数年前に米コンピューター大手のヒューレット・パッカードに引き抜かれ、その後、無停止コンピューターのタンデムコンピューターズに移った。

平松がぶっきらぼうに言う。

「もうすぐ俺もそっちに行くんで、今忙しいんだ」

「へえ、何しに来るの?」

「言えない。で、何だ?」

「ああ、そうそう。ちょっと前に太った日本人がラボを見せろってクパチーノ(カリフォルニア州にあるタンデムの本社所在地)に来てさ、俺が元ソニーって知ったらソニーの偉い人を紹介してくれってしつこいんだよ」

「俺は偉くない」

「でも偉い人たちと仲良しじゃん」

初めのうち、井上の話は要領を得なかったが、だんだん平松の顔色が変わっていく。

「それ本当か?」

「と思うよ。うそをついてもしょうがないでしょ。頭のいいやつだったし」

「何なら、今から実物を見に来ません?」

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