現在の鉄道業界にはびこる「全体主義」の正体は? 「安倍政権の軍師」藤井聡氏が力説する公共交通像
今回の札幌開催で20回目を迎えたJCOMMであるが、藤井聡氏に立ち上げの動機を聞いたところ「現在の主流経済学者の存在の『空疎さ』に耐えられなかった」ことが理由であるという。土木計画学は「工学」に分類されるが、経済学や心理学をベースに、インフラ問題を改善・解消しようとする学問である。しかし、藤井氏が博士号取得のための研究を行っていた1990年代後半は、経済学をベースにインフラ問題の課題解決を図るといったアプローチは主流であったものの、心理学をベースに課題解決を図ろうとするアプローチは主流ではなかった。
藤井氏が博士号取得のための研究で、経済学をベースに交通現象や都市現象を理解し、それに関する社会政策を考える上で、主流派経済学だけでは不十分であると感じたことが、心理学を学ぶきっかけとなった。主流派経済学では人間の行動や心理のメカニズム、風習や習慣などの社会のメカニズムを完全に無視しており、個人の行動はすべて完璧に合理的であるというまったく現実からかけ離れた理論に基づいて経済現象を説明し、その上で政策を考えるという。藤井氏は、「主流派経済学の研究が、『経済』という言葉の語源である『経世済民』の本来の意味とはかけ離れていた点に無意味さを感じた」と当時を振り返った。ちなみに「経世済民」は、「社会全体を良い方向へ導き、人々の生活を豊かにする」という意味を持つ。
「社会心理」の対策も必要
博士論文を書き終えた後に留学したスウェーデンのイエテボリ大学の心理学科で本格的な心理学研究を始めた。藤井氏が所属した研究グループでは、後にノーベル賞をとったダニエル・カーネマン氏やリチャード・セイラー氏らと共同研究を行っていた行動経済学者たちも参加しており、学際的な研究が行われていたという。
藤井氏は、スウェーデン留学中に、実際の社会現象は「環境」と「社会心理」の双方に基づいて決定されるため、政策目標を本気で達成しようとした場合には、「環境」面のみの対策を考えた従来の経済学ベースの考え方では不十分で、「社会心理」面に対しての対策も必要になることから、「心理学的アプローチを経済学や国土計画論に導入するべき」だと考えた。そして、帰国後に国土交通行政に適用した最初の試みがモビリティマネジメントだった。



















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