評価が不十分だと、学生はどう改善すればいいかわからなくなる。早川さんが体験したような、学ぶことで得られる楽しさ、面白さからは遠ざかってしまう。
「よくできる学生はいくらでも伸びるんです。でも、勉強の仕方や考え方が今ひとつ掴めなくて、何をどうしたらいいのかわからない学生は、適切な評価を受けないと動きようがなくなってしまいます。だから、ついていけなくなっている学生もいるんです」
ついていけないからといって、リタイヤしてしまうとは限らない。早川さんの勤務校でついていけなくなった学生も、「なんとか頑張って通っている」のだという。
そのモチベーションを支えているものの1つは、看護学校ならではの修学資金の仕組みにあると考えられる。卒業後の病院勤務と引き換えに返済が免除されるため、看護の楽しさ、面白さに気づくことなく看護師となり、返済免除に必要な勤務期間を終えたら離職してしまうケースは決して少なくないだろう。
情報共有の仕組みがなく、無意味な残業が横行
しかし、なぜ生徒を置き去りにしてしまう「やりっぱなし」の教育が成り立ってしまうのか。早川さんは「自主性の尊重がマイナス効果につながっている面がある」と分析する。
「学生だけでなく、教員の自主性も重んじているので、個々の裁量が非常に大きいんです。思ったとおりの授業が構成できて、講師や実習先なども自由に探すことができます。それだけに、一人ひとりの教員が何をしているのか全くわからないんです。実習やグループワークの内容によっては、お手伝いを頼まれることもあるのですが、それまで何をしていきたのかわからないので、どう手伝えばいいのかいつも困ってしまいます」
自由度が高いといえば聞こえはいいが、属人化が極まっている状態ともいえる。業務効率が悪いだけでなく、情報共有もなされていない。問題はそれが、学校組織としての取り組みにも大きく影響していることだ。
「講師依頼や実習先探しなど、ほかの学校なら事務が担う業務も教員がやっているので、業務量がどうしても多くなり、残業が常態化しています。厄介なのは、定時をとっくに過ぎて夜になる頃に、自分の仕事を終えた教員同士で学校としての取り組みについて話し合われることです。『じゃあ明日からこうしましょう』と和やかに話し合いが終わるんですが、その場にいない教員は、その内容を知る方法がないんです」



















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