「当初は月に数足しか売れず…」。小さな靴下工場が挑戦し続けた「自衛隊のための一足」、いま「究極の五本指ソックス」として支持される理由
ミリタリーカラーで、いかにもタフな印象の「自衛隊員向け」の靴下が、一般の人にも人気なのをご存じだろうか?
その靴下とは、「GUTS-MAN(以下、ガッツマン)」のことだ。奈良県橿原市にある巽(たつみ)繊維工業所が製造する商品で、単なる消耗品としての靴下とは一線を画す。
現在、ガッツマンシリーズは一般的な形をしたノーマルソックス、パイル生地のもの、5本指ソックスや滑り止め付きのスポーツ用などを販売中だ。
とくに人気は5本指ソックス。このうち「最強」とされるのが、自衛隊の100km行軍にも耐えうるという「スーパーストロング5本指ソックス」だ。耐摩耗度の品質検査では、通常のスポーツ用ソックスの6倍以上にもなったという。
Amazonのレビューを見ると「やっとたどり着いた最強の5本指靴下」「この靴下以外はもう履けない」「工事現場の味方」「足が疲れない」といった熱量の高い口コミが並ぶ。中には「なかなか破れないので、6年ぐらい履いている。あまりにも丈夫すぎるため、会社の存続が心配だ」と心配する声も。
奈良県の小規模な靴下工場が、なぜ顧客に「究極の耐久性」とまで言わしめる商品を生み出せたのか? その背景を探るべく、同社の会長・巽亮滋さんと、娘であり4代目社長の美奈子さんに話を聞いた。
熾烈な価格競争に苦しんで
巽繊維工業所は1928年に大阪の東大阪市で、美奈子さんの曽祖父・丈太郎さんが創業したのが始まりである。初期の事業は、綿糸の撚糸(ねんし:糸をより合わせる強度を上げる作業)で、主に漁網を生産していた。
次第に事業規模を拡大し、本社を奈良県橿原市に移転し、工場を設立。技術を生かして、大手企業やスポーツメーカーの靴下のOEM生産(相手先ブランドによる生産)を行うようになった。だが、アパレル業界は海外生産が主流となり、国内の市場規模は縮小していく。



















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