「当初は月に数足しか売れず…」。小さな靴下工場が挑戦し続けた「自衛隊のための一足」、いま「究極の五本指ソックス」として支持される理由

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その隊員から「駐屯地にはパンを売りに来ている人もいる。靴下もそうやって机の上に並べて売ったらどうか?」というアドバイスを受け、亮滋さんは、再度各駐屯地に直談判。展示即売会という形で、靴下を販売させてもらえるようになった。

亮滋さんは会社の車に靴下を大量に載せ、各地の駐屯地に並べて販売した。ある時、隊員たちから靴下の名前を尋ねられ、亮滋さんが靴下に名前を付けていなかったことに気が付く。

「人のために献身的に働く自衛隊員は、ガッツがある」

そう思い、「ガッツマン」と命名。「女性隊員向けの商品もあるんですが、ブランド名はガッツマンで統一しました」と亮滋さん。この商品は、知り合いや上官の口コミで広がり、訓練に必須のアイテムとして少しずつ認知されていった。

1997年には、立ち上げ間もない楽天市場にECショップを開設した。このときは、あえて「巽繊維工業所」の名前を出さずにスタートさせた。当時、OEM中心に展開してきた会社が、自社製品を売り出すのはタブーに近い印象があったためだという。

その後、Amazonでもショップを展開したが、当初は月に数足しか売れず、税理士からも「無駄なことはやめた方がいい」と指摘された。だが、他に良い売り方が見つからず、「希望」という名の細い糸をたぐり寄せるように販売を継続した。

コロナ禍での大逆転劇

2015年、亮滋さんの娘である美奈子さんが入社し、そこから巽繊維工業所は一般消費者に直接販売するBtoCの取り組みを強化する。

美奈子さんは橿原商工会議所のビジネスプランコンテストでグランプリを獲得するなど、話題作りにも尽力した。

そして2019年にはクラウドファンディングサイト「Makuake」で「自衛隊員愛用の高機能靴下ブランド『真の究極の五本指ソックス』への挑戦」というプロジェクトを立ち上げた。「応援購入」で目標金額の40倍を上回り、当時の靴下プロジェクトとしては異例の約427万円という支援額を達成した。

クラウドファンディング
サポーターから400万円以上の支援が集まったクラウドファンディングページ(画像: MakuakeのHPより)

当時の快進撃を、美奈子さんはこのように振り返る。

「Makuakeさんからは『もう少し万人受けするようなサイトデザインにした方が……』とアドバイスをもらったんですけど、父が自衛隊員の方を応援したくてできた靴下なので、ガチガチの迷彩柄のカラーで展開しました」

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