日本橋茅場町に「約17㎡の田んぼ」、都会の小学校ならではの特色を生かして企業と連携"都市型環境教育"の中身

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大蔵大根、聖護院大根、亀戸大根など姿かたちが違う6種類の大根の種をじっくり観察し、「これがどう成長していくんだろう?」と想像を広げる。そして、1粒1粒大きくなるよう願いを込めながら、自分たちの手でていねいに種まきを行った。

大根の種まきも行う子どもたち
大根の種まきも行った(写真:筆者撮影)

授業の最後は、皆でレモンバジルのアイスティーを飲み、さわやかな香りを楽しみながら活動を締めくくった。都会の真ん中で暮らす子どもたちだが、土に触れることや虫を怖がる様子もなく、のびのびと活動する姿が印象的だった。育てた大根は、最後の授業で、自分たちで調理し味噌汁や甘酢漬けなどの漬物にして食べる。

五感で育む「豊かな原体験」を

ESYJが提供する「エディブル授業」は、どのようにして始まったのか。山本氏は、そのきっかけをこう語る。

「私たちESYJは、『すべての子どもたちに学校菜園を』というビジョンを掲げて活動しています。公立校の子どもたちに命の学びと居場所を届けたい私たちと、地域貢献の一環として阪本小学校の子どもたちに『Edible KAYABAEN』を使ってほしいという平和不動産さんの思いが重なったのが、はじまりのきっかけでした」(山本氏、以下同じ)

授業の運営は、ESYJと学校が連携して行っている。年度初めに、ESYJと担任の先生たちとで年間の授業方針をすり合わせる。また、各回の授業の前にはその日の流れを事前に共有。学校側はグループ分けなどの事前準備を、ESYJは授業の実施を担うという役割分担で体験学習を実現している。

山本氏がこの授業を通じて最も大切にしているのは、子どもたちの「豊かな原体験」を育むことだ。

「子どもたちは五感すべてで自然に触れ合う中で、たくさんの不思議を発見し、たくさんのことに気づきます。また、皆で土に触れ、食べられるものを育て、料理し、食卓を囲んでいただく一連の食の体験を通して、共に生きることと、生命とのつながりを実感していきます。土に触れる機会の少ない都市部の子どもたちにとって、『Edible KAYABAEN』で過ごす時間はかけがえのないものになっていると考えています」

エディブル授業を通じ、山本氏は子どもたちの純粋な探究心に触れている。

「菜園で活動する中で、子どもたちが発見して言葉にする表現の瑞々しさに感動します。とくにコンポストなどの活動では、その積極性が際立ちます。最初は匂いなどをためらっても、気づいたら自ら飛び込んでいくような姿があり、私たち大人が作る境界線を簡単に越えていきます。子どもたちにとっては、遊ぶこと、学ぶことが分断されずに渾然一体となっている。この自然な学びの姿が最も大切だと感じています」

都市の真ん中で土に触れる。この小さな一歩が、子どもたちの心に、命への感謝と、自然と共生する未来の種を蒔く。多くの企業が集まる「地の利」を最大限に生かし、地域全体を「生きた学びのフィールド」とする阪本小学校の教育には、都市型環境教育の醍醐味が凝縮されている。

東洋経済education×ICTでは、小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。
長島 ともこ フリーライター&エディター

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ながしま ともこ / Tomoko Nagashima

育児、教育、PTA、暮らしのジャンルを中心に、書籍、雑誌、PR紙、WEB媒体において取材、執筆、企画、編集、講演等の活動を行っている。また、自身のPTA活動や記事執筆を機に、全国のPTA仲間と「PTA・保護者組織を考える会」を立ち上げ、情報発信やイベントの運営、PTAやP連からの相談活動等を行う。

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