前加賀市教育長・島谷千春氏が「教育改革は、組織マネジメントに行き着く」と語る深い理由――<子どもに委ねる学び>に必要な教員研修とは?
島谷氏は、「内省したり、人の考えを聞いたり、新しい知識に出合いながら、自ら“気付き”を掴むことが新しい行動への強い動機づけになるので、研修での対話はその一環です」と話す。
しかし、研修という場で自己開示をしながら対話をするには、心理的安全性が必要だ。そのため、日頃からの教育委員会と現場の教員との信頼関係が重要だという。
「『教育委員会が権威的な“上から目線”で指示し、現場は従う』といった関係では、先生は研修で自己開示などできません。私が着任してすぐに言ったのは、『失敗大歓迎。まずはやってみよう』ということ。すると、先生たちはその言葉も味方にしてくれながら、授業を変えようと踏み出してくれました。
それほど『失敗しちゃいけない』という恐れがあったのでしょう。また、教育委員会と現場と子どもの関係はすべてつながっていくので、先生たちが子どもたちに『失敗はいくらでもしていい』と心から言えるようになるためにも、まずは教育委員会と現場との関係構築を大切にしました」
「ピカピカのモデル校」を作らなかった訳
加賀市の学びの改革は、モデル校を作らずに、市内の小・中学校23校(現在は22校)で一斉に始めた。「主体的・対話的で深い学び」の実現は国が明示しているものだからだ。しかし、理由はそれだけではない。
「予算と人員を与えて普段と異なる環境を作ってしまうと、周囲は『予算があるからできるんだ』『あの人がいるからできるんだ』と思いがちで、自分事になりません。また、ピカピカのモデル校とそうでない学校の子が中学校で合流した時、足並みを揃えることが大変です。
今回は『〇〇教育』のようなプラスオンの取り組みではなく、ベースとなる『学び方』の部分であり、『主体的・対話的で深い学び』が根付いていくことを目指していたので、モデル校という発想にはなりませんでした」


















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