酒田市立琢成小が周年事業で「アントレ教育」導入の訳、大人も参加「授業の中身」 当初は戸惑いも…教員を変えた気づきとは
現代の子どもたちは、親や学校の先生以外の大人と出会う機会が少ないもの。これからもリアルな場でさまざまな大人や異学年の子どもたちと協働して学べる環境を提供したいと考えています」(安川氏)
近年、地方の人口減少は日本全国で深刻な問題となっており、とくに地方圏で顕著だ。酒田市で生まれ育ったというPTA副会長の齋藤氏は、「山形県の人口は2025年5月に100万人を切り、酒田市も10万人を切った2021年からすでに9万2000人台まで減ってしまいました。若い人たちがどんどん外に出て行ってしまうのが大きな課題です」という。
「だからこそ、子どもたちに、小さい頃から『この町は自分のやりたいことをどんどんやらせてくれる場所だ』と感じてもらうことが大切だと考えています。子ども時代の18年間は、まさに“地域にとってのボーナスタイム”。この間にたくさんの経験を積ませることで、『いつか地元に帰ってきたいな』と思ってもらえる可能性を育てていきたいですね」(齋藤氏)
挑戦の種を、地域の力で花開かせる
11月に控える創立50周年式典では、「琢成アントレDAY」の様子を撮影した写真や子どもたちのメッセージを展示する予定だ。また、子どもたちがこれまで取り組んできた総合的な学習の時間の成果を、学年ごとにプレゼンテーションする計画も立てられているという。
「学校・PTA・地域・まなびパレットさんと連携して実現した今年度の取り組みを、今後も持続可能なものにしていきたいと考えています」と、小松氏。ただし、今年は創立50周年記念事業だったため十分な資金があったものの、来年度以降は自分たちで資金を集める必要があるという。
「継続して活動できる仕組みをつくるために、酒田市産業振興まちづくりセンター(サンロク)さんと連携し、さまざまな企業の方々に学校に関わっていただく仕組みを作っていきたいと考えています。この取り組みに賛同してくれる企業さんに協力をお願いし、資金面でも支えてもらえるような体制を整えていきたいですね」(小松氏)
5年、10年先を見据えると、「学校は、学校だけで完結する場所ではなくなるでしょう」と、小松氏は言う。では、学校の未来はどのように変わっていくのだろうか。小松氏は、次のように展望を述べる。
「学校が地域の活動拠点となり、地域住民や企業、外部の人材などこれまで学校の外にいた人たちが、もっと積極的に関わってくれるようになるのではないかと想像しています。そして、学校の先生だけでなく、地域全体で子どもたちの学びを支えていく形になっていくはずです。私たちは、そのための新しい仕組みや形を、今年度から来年度にかけて、皆さんと一緒に作っていきたいと考えています」
創立50周年を迎え、琢成小学校が「物」ではなく「事」として残そうとしている「教育の柱」。それは、子どもたちが失敗を恐れず挑戦し、地域全体でその学びを支え合い、深めていく文化だ。この挑戦はきっと、子どもたちの未来を、そして街の未来を、より豊かにしていくに違いない。
(写真:長島ともこ)
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