酒田市立琢成小が周年事業で「アントレ教育」導入の訳、大人も参加「授業の中身」 当初は戸惑いも…教員を変えた気づきとは
午前中いっぱいの時間を使ってワークシートをまとめ上げ、活動した教室でグループメンバーと一緒に昼食をとったあと、午後はワールドカフェ形式で発表会。発表を聞いたほかの参加者が「いいね!」と思ったら、そのグループのメンバーにチケットを渡すというユニークなルールも設けられた。

40を超えるアイデアと未来へのメッセージ
各教室で行われた発表会は、想像をはるかに超える盛り上がりを見せた。
「空き家がいっぱいある地域の許可をもらって、みんなが集まれる場所にします!」 「『モヤモヤをすっきりさせるCD』を作って、悩みを抱えている人を助けます!」 「家族や友達と仲良くなれるプロジェクトで、もっと会話する時間を増やしたいです!」など、40を超えるアイデアが、校内のあちらこちらで発表された。
子どもたちは、自分たちで考えたプロジェクトが多くの人に支持されるよう、時に身振り手振りを交えながら懸命にプレゼンテーションを行っていた。発表終了後には、「他のグループの子からもらったチケットがこんなに集まったよ!」と、歓喜の声を上げる姿も見受けられた。
その後、全員で体育館に移動。会の締めくくりとして、この日の活動を振り返る時間が設けられた。子どもたちは「よかった点」や「もっとこうすればよかった点」について真剣に話し合いながら、互いの頑張りを称え合ったり、一緒にグループワークを行った大人からのねぎらいの言葉に笑顔を見せたりしている。この温かな振り返りの時間を通じて、子どもたちの学びはさらに深まったようだった。
最後に、小泉氏から子どもたちへ、メッセージが贈られた。
「自分の考えを言葉にしよう。一人ではできないことも、勇気を出して言葉にすることで、周りの人が協力してくれるから。それから、失敗を恐れないで。うまくいくまで何度も挑戦することに価値があります。これからも、たくさん挑戦して、たくさん失敗することを楽しんでください」
さらに小泉氏は、先生方の支援があってこそ子どもたちが深く学べたことに感謝の意を示し、参加していた大人たちに「この子たちの挑戦を、これから温かく見守り、背中を押し続けてほしいです」と語りかけた。
「琢成アントレDAY」は、単なるアイデア発表会ではなく、同校の子どもたちが未来を創る力を身に付けるための、貴重な一歩となった。

創立50周年「物より事を」、琢成小学校の新たな「教育の柱」
「本校は、明るく素直でやさしく、好奇心旺盛な児童が多い一方で、物事に主体的に関わる力や周りと関わりながら学びを深めていく力に課題を感じていました」と語るのは、2024年度から琢成小学校の校長を務める小松泰弘氏だ。

酒田市立琢成小学校校長
(写真:本人提供)
小松氏は、「子どもたちが自ら進んで課題を発見し、他者と協働して解決するために粘り強く行動する力を育てていきたい」と考えていた。そんなとき、同校PTA副会長の齋藤知明氏を通じて、アントレプレナーシップ教育の考え方に出合ったという。
都内の大学教員として地域と学生の協働を経験してきた齋藤氏は、その学びの価値を誰よりも実感していた。齋藤氏は、「仕事で東京に通っていた際、当時都内の公立小学校教員だった小泉先生が、総合的な学習で4年生の子どもたちが1年かけて1000人の大人と出会い、課題を解決する取り組みを行っていることを知り、感銘を受けました」と振り返る。

酒田市立琢成小学校PTA副会長、酒田コミュニティ財団設立準備会会長
(写真:本人提供)
創立50周年を控え、PTA役員として「周年行事を講演会や演奏会などだけで終わらせるのではなく、未来の100周年に向けて残るような取り組みをしたい」と考えていた齋藤氏は、小泉氏に協力を打診した。その熱意に、小泉氏も快く応じたという。
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