「検索してはいけない」「怖い」不穏なワードと共に検索される謎の“遊園地” 崖っぷち経営の《自虐イズム》に隠された、実は真面目な生存戦略

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なお、その新しい水洗トイレはGoogleマップにまで登録されており「メルヘントイレ」という名前になっている。それを境田さんに伝えると「えっ、それは知りませんでした。なんですかそれは」という反応。おそらく客がユーモアで登録したのだろう。評価は堂々の星5つである。

「でも実は……観覧車の近くにあるもう1つのトイレはまだ未工事なので、実はメルヘン村のぼっとん便所歴は更新中で現在33年目になります(笑)」

怖くてカオスが、優しく迎えてくれる

メルヘン村園内を散策すると、スタッフの方々のあいさつが気持ちいい。遊園地ゾーンでは、電力節約のため観覧車など一部の遊具が稼働していないことが多い。そんなときは「すみません」と声を掛けて、電源を入れてもらうのだ。

この日は、女性のスタッフさんから「どちらからですか?」と聞かれ、世間話をしながら観覧車が動き出す様子を間近に見ていた。ギシッというさびめいた駆動音も優しく感じられる(けれどこのあとまぁまぁな強風に揺られて少し怖かった)。

両膝を揃えて、強風の揺れに体をこわばらせながらふと上を見ると、ドン・グリスの顔があった。この場所にせっせと貼り付けているスタッフさんの姿を思うと、なんだかいとおしい。

自販機の中
自販機の中にもドン・グリスのステッカーが……(筆者撮影)

スタッフの女性にお礼を告げ観覧車を降りると、女性2人組がいた。聞くと、たまたま旅行先でGoogleマップを開いたらここが見つかり、ネット記事の情報を見てやってきたという。

「怖くてカオスって聞いて(笑)。それもあるけど、なんかゆるくて、みんな優しくていい場所! また来たいです」と、いい意味で期待を裏切られた様子。2人が頭にかぶったドン・グリスのバイザーがそれを物語っていた。

女性2人組
メルヘン村を思いっきり満喫する女性2人組(筆者撮影)

現場とSNS、これからも続いていく、メルヘン村流のとがったおもてなし。現在は、忍者村と、同じ経営である温泉旅館「入船荘」も加えたユーモアあふれるトライアングル戦略も実施中だ。

これからも老舗遊園地は、かめばかむほど味わい深い、そんな魅力を発信し続けてくれるだろう。

【写真を見る】本編で紹介しきれなかった写真も!メルヘン村の中の様子はこんな感じ。
山本 千尋 フリーライター

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やまもと ちひろ / Chihiro Yamamoto

1986年生まれ、長崎県佐世保市出身・在住。フリーライター、劇団主宰。Uターン後、地元情報誌の編集記者として勤務。結婚を機に退職し、関東のメディア「デイリーポータルZ」でも執筆していた記事をベースに著書「佐世保の自由研究」「佐世保の自由研究2」をリリース。夫と二人の娘との暮らしのなかでふれるさまざまなヒトモノコトを取材しています。

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