東京ディズニー、「独り負け」に潜む深謀遠慮 2015年度上半期の客数減を読み解く

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東京ディズニーランドと東京ディズニーシーそれぞれの入園者数は公表されていないが、「待ち時間などを見ていくと、2014年は、イベントで集中的にバリューアップしたランドが減少したのに対し、シーは減っていない」(野村証券の山村淳子アナリスト)。この“ランド軟調・シー健闘”が、これからのTDRの戦略を象徴しているという。

オリエンタルランドとしては、2023年度までに5000億円規模をTDRに投下する。目玉は各パークでのゾーン開発だ。ランドではファンタジーランドを2倍に拡張、シーでは「アナ雪」の世界を体験できるエリアを含む、新ゾーンを導入する。

シーは拡張用エリアを活用するが、ランドは既存のファンタジーランドと、隣接するトゥモローランドの一部をリニューアルする。導入時期は2017年度以降で、早ければ2016年にも開発に着手するとみられる。工事が始まれば、ランドは一部閉鎖を余儀なくされ、収容人数も減少する。

オリエンタルランドは「段階的に開発し、入園客への影響は最小限に抑える」方針だが、ここまで大規模な再開発は開園以来初めて。客数減など、閉鎖に伴う影響は読み切れない部分が大きい。

隣接する本社の一部機能を2016年に移転するのに伴い、パークを拡張するのではないか、との観測も流れているが、キャパシティが減るランドの受け皿として大きな役割を担うのは、シーだろう。「既存エリアに変更がないシーに人を寄せてランドの客数を減らすことは、リニューアル時の客の滞留や動線を考えると合理的」(山村アナリスト)。

ディズニーシーの集客力を徹底強化

実際、既存イベントを継続しているランドに対し、シーは今年度上期にイースターイベントを初めて開催。ハロウィーンも新規イベントを導入している。さらに2016年はシー開園から15年を迎える。絶大な集客力を発揮する周年イベントを予定しており、ランドの収容能力低下を補うには格好のタイミングだ。

シーは乗り物系のアトラクションが少ない一方、ショーが豊富で、アルコールが提供されるため、大人向けのイメージが強い。が、4月には3歳未満も楽しめる、ステージショーをリニューアル。2017年春にはキャラクターが人気の「ファインディング・ニモ」のアトラクションも導入予定で、子連れ客を意識した取り組みを強化する。

開発の詳細は年内に発表される。オリエンタルランドは、工事中も客数を維持、増大させていくことができるのか。ファンや株主からの過大な期待が待ち受ける。

「週刊東洋経済」2015年10月31日号<26日発売>「核心リポート05」を転載)

鈴木 良英 東洋経済 記者

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すずき よしひで / Yoshihide Suzuki

『週刊東洋経済』編集部記者

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