丸一鋼管はベトナム、インド軸に海外事業強化。自動車やエネルギー向け拡大し中期で売上高1600億円、営業利益200億円狙う
溶接鋼管首位の丸一鋼管は、これまで強みだった建材用途から自動車やエネルギー用途にシフト、ベトナム、インド軸に海外事業の強化を進める--。丸一鋼管が発表した中期計画は、2014年度(2015年3月期)の最終年度に、海外売上比率を足元の20%強から35%に引き上げ、売上高1600億円(今期見通し比33%増)、営業利益200億円(同35%増)を目標に掲げた。
3月28日に都内で開かれた説明会で、鈴木博之社長は「海外で積極的な事業展開を一層加速し、国内外で鋼管トップ企業としての地位を不動のものにしたい」と意気込みを話した。丸一鋼管の過去最高売上高は08年度の1542億円。これを超える1600億円を目標とするが、狙うのは海外。そして、自動車とエネルギー関連の鋼管事業だ。
今期予想売上高1203億円から400億円増える増収計画の多くを占めるのが、ベトナムとインドを軸としたアジア地域だ。ベトナム(SUNSCO)では、現状の自動車関連2%、エネルギー6%という比率を、それぞれ6%、13%まで引き上げる計画だ。特に、足元の金融引き締めによる内需低迷で苦戦しているベトナムでは、鉄筋棒鋼から撤退する一方、需要の強い表面処理やカラー鋼板の設備を増強。排気管用ステンレス鋼管の生産を開始するほか、昨年9月にAPI(米国の石油規格)を取得したことで油井管向けも「米国向けの輸出の成約が積み上がってきている。おそらく5月には現地にものが出せるので、今年後半からレベルがあがる」(鈴木社長)と期待する。
もう一つのアジア増収要因がインド。09年11月に子会社化したKUMA社を12年度(13年3月期)から連結化する。13年初めにもチェンナイ工場が立ち上がる。すでに自動車向けで強力な存在であるステンレス鋼管に加え、普通鋼鋼管も動き出す。全量自動車向けで、今後さらなる自動車メーカーの工場新設が進めば、大きな増収要因となりそうだ。
米州では建材などが売り上げの99%を占めているが、今年1月に設立したメキシコの自動車向け鋼管事業は、今年12月に工場が完成予定で、14年度から連結化する見通しだ。また、エネルギー用途も、シカゴの工場を拡充中で、ラインパイプ向けを本格化する。シェールガスなどは、これまで開発はテキサスなど南部中心だったが、足元はペンシルバニアやカナダに近い北部で開発が進んでおり、これに対応する。この結果、14年度には自動車関連で8%、エネルギー用途で16%まで伸ばし、建設用途などは76%までに下げる計画だ。
今年10月には、新日本製鉄と住友金属工業の合併が予定され、それぞれの傘下にある日鉄鋼管と住友鋼管の統合も噂される。鈴木社長は「統合されると圧倒的な当社のポジションは肩を並ばれることになる。摩擦も多くなるが、2社によるマーケット占有率も高まる」とマイナス面の一方、寡占化のメリットにも期待する。丸一鋼管の材料の調達先は、JFEが多く、これに神戸製鋼、ポスコが続いており、新日鉄や住友金属からの購入は少ない。これまでどおりの購買政策でいけるとみている。
いずれにしても、国の内外で攻守が鮮明だ。国内は東京工場の集約化など、配送コストを含め効率化を進める一方、海外は、現在建設中の中国・武漢、インド・チェンナイ、メキシコの各工場も含め、6カ国14工場に海外生産拠点が広がる。この海外事業の成否が、中期計画達成のカギとなることは間違いなさそうだ。
(写真は中期計画を説明する鈴木博之社長)
(山内 哲夫 =東洋経済オンライン)
《東洋経済・最新業績予想》
(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 純利益
連本2011.03 115,758 16,505 18,625 10,211
連本2012.03予 120,300 14,800 17,000 5,900
連本2013.03予 126,000 17,000 19,400 11,000
連中2011.09 59,413 8,283 9,554 4,796
連中2012.09予 62,000 8,300 9,500 5,300
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1株益¥ 1株配¥
連本2011.03 117.8 46.5
連本2012.03予 69.2 46
連本2013.03予 129.1 46-50
連中2011.09 56.2 20
連中2012.09予 62.2 20
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