奈良教育大附属小から突然の知らせ…全国の国立大学附属学校・幼稚園で「規模縮小」の深刻 教育大学が「稼げる大学」にはなれない?!
縮小の理由を「少子化」と説明している大学は多い。少子化が急速に進んでいるのは事実だが、それ以上に切迫した理由がある。全国国立大学附属学校連盟事務局長の彦坂秀樹氏は、「大きい理由は大学運営費交付金が減らされていることでしょう」と言う。
大学運営費交付金は、国立大学の運営には大きな比重を占めている。それが、減らされてきている。法人化された2004年度は1兆2415億円だったが、2025年度は1兆784億円と、2000億円近くも減っている。今年6月7日に国立大学協会は、大学運営費交付金の減額や物価高騰を受け、国立大の財務状況は「もう限界だ」と訴える異例の声明を発表している。
しかも、これが均等に配分されているわけでもない。文部科学省は「成果を中心とする実績状況に基づく配分」を掲げ、「常勤教員当たり受託・共同研究等受入額」などを配分の指標にしている。企業などとの受託・共同研究の額が多いほど、大学運営費交付金も多く配分されることになるわけだ。法人化によって、その流れは強まっている。
受託・共同研究が多ければ大学の収入も多くなる、つまり法人化は「稼げる大学」への転換を迫っていることにもなる。
附属学校園の縮小だけでなく「存続にも関わる」
理系学部を持つ大学であれば、企業との受託・共同研究の機会も多く、稼げることになる。しかし、教育大学は理系学部を持たないために受託・共同研究の機会は少なく、それだけに稼ぐことも難しい。
にもかかわらず「成果」によって配分されるとなると、大学運営費交付金も少なくなることになる。規模の違いなどがあるので単純に比較するわけにはいかないが、2025年度の国立大学運営費交付金は、東京大学の約782億円に対して教育大学である東京学芸大学は約77億円でしかない。
企業とのコラボレーションで稼げないうえに大学運営費交付金も少なくなっていく一方で、教育大学の運営は苦しくなっているのが現実である。そのため附属学校園を維持していくのは楽ではなく、大学そのものの運営のためにも合理化して経費削減につなげる必要に迫られている。
わかりやすく言えば、学級を減らせば担任を減らすことができ、人件費削減が実現できるのだ。そのために附属学校園の縮小が実施されているといえる。先述の奈良教育大学附属小の学級数削減でも、教員を削減していく方針が保護者に説明されている。
問題なのは、縮小によるデメリットである。附属学校園への入学・入園がさらに難しくなることも、その1つである。さらには、附属学校園としての役割が果たせなくなってしまうことへの懸念だ。附属学校園の役割について、前出の彦坂氏は次のように説明する。