《松本潤主演》ドラマ『19番目のカルテ』浮き彫りにする“日本医療の課題” 外科や内科だけじゃない!あなたの知らない「総合診療医」の世界

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総合診療医が増え、じっくり問診・診療しても経営が成り立つ環境へと転換しなければ、これからの高齢化社会において患者の健康課題の解決はますます遠いものになると思われる。

今後、わが国において重要な役割を果たすであろう総合診療医だが、日本では総合診療医が活躍しにくい制度上の障壁が存在する。その象徴が「標榜科」の問題だ。病院やクリニックの看板・広告に掲げる診療科名は医療法に基づくガイドラインで制限されており、「総合診療科」の院外標榜が現在認められていない。

他の基本領域(内科や外科、小児科など)は標榜可能なのに、総合診療科が標榜できない。このため、せっかく総合診療を専門に研鑽した医師も、診療所の開業時には「内科」や「小児科」を院外標榜するしかないのだ。

患者側から見ても、地域で総合診療医を見つけること自体が難しいというのが現状だ。ドラマのように「総合診療科」という看板を院内標榜として掲げている病院やクリニックは日本では多くない。前述の報酬制度の課題を含め、日本において総合診療を根付かせるために乗り越えるべき壁は多いと言わざるをえない。

ドラマを他人事にせず、制度改革の後押しを

ドラマ『19番目のカルテ』は、我々に極めて現実的な問題提起を突きつけている。それは、「自分や家族が患者になったとき、本当に必要な医療に無事たどり着けるだろうか」という問いでもある。

医師の専門分化が進みすぎて肝心の“かかりつけ医”が不在になっている日本の医療提供体制を、他人事と捉えてはいられない。総合診療の充実に向けては医療界だけでなく住民も当事者意識を持ち、議論を深めることが重要だ。

幸い、今回のドラマ放送を機に総合診療科への注目は一気に高まっている。「この医者が自分の町にもいたら」と願う声が国民から上がれば、標榜規制の緩和など制度改革への大きな原動力となるだろう。

医療制度とは本来、国民のニーズを映す鏡である。現場の奮闘を無駄にしないためにも、私たち一人ひとりが関心を寄せ、行動することで、“19番目のカルテ”をより現実のものにしていきたい。

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川﨑 真規 日本総合研究所 上席主任研究員

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かわさき まさき / Masaki Kawasaki

1978年生まれ、幼少期は米国で生活。関西学院大学院修了(MBA)。システム会社、コンサルファームを経て、2009年日本総合研究所入社。中国現法副総経理を歴任するなど10年間中国事業に携わり、2019年に帰国。現在は、かかりつけ医制度やデジタルヘルス分野の政策・規制改革提言に従事。中小企業診断士などの資格を持つ。

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