栃木公立3校目のSSH、県立高校再編でスピード改革「常に最適解を更新する」学校教育へ 宇都宮東高校・附属中学校が中等教育学校に
すでにある制度をいかに活用するか
生徒の希望により実現した取り組みは、ほかにもある。「海外留学をしたい」「国際性を育みたい」という声が多かったものの、短期間で学校独自の海外研修を立ち上げるのは難しく、在校生が利用することはできない。
また、今は海外研修も一斉指導という時代ではなく、生徒の経済的な状況も異なる。それでも生徒たちの希望をかなえようと取った方法が、“すでにあるコンテンツを取り入れること”だった。
その1つが官民協働の留学支援制度であるトビタテ!留学JAPANだ。この制度に関する説明会を校内で開催したほか、宇都宮市による海外の姉妹都市への中高生・青少年派遣事業を生徒に紹介。さらに、茨城県の中等教育学校と連携し、同校の海外研修プログラムに宇東高・附中の生徒が参加できるようにした。
「学校の特色として、生徒の探究マインドにあわせて英語力の向上も視野に入れたグローバル人材の育成についてもやってみようと考えました。文科省が支援する『トビタテ!留学JAPAN』には、今年度10名の生徒が採用されました。今後はSSHの海外研修で、国際性も育もうという計画が進んでいます」
県の再編計画を足がかりに、現場の力と生徒の希望が推進力となった宇東高・附中の学校改革。1年目に挙がった課題や取り組むべき内容は校務分掌で割り振られ、2年目の今年は分業フェーズに入っているという。
最優先は生徒、常に最適解を更新する
国や県など教育行政からみた学校の理想像、現場の教職員の想いや声、生徒の期待を織り込んだ学校改革をたった1年間という短期間で具現化できた要因について鈴木氏はこう分析する。
「生徒や教職員のワークショップで上がった声をデータとして収集・分析してフィードバックし、そのうえで『もっと何かアイデアはありませんか』と問いかけ続けたほか、学校が潜在的に抱える課題を対話によって明らかにしてきました。そのため、先生も生徒も、学校改革に本気なのだと感じてもらえたのだと思います。こうした改革を進めるうえで大切なのは、『皆さんの意見や、学校として抱える課題はこうでした、われわれが向かうべき方向はこうです』と学校全体をデザインする力だと考えています」
とはいえ、来年以降は単位制の導入、中等教育学校への転換が控えており、宇東高・附中の改革はまだ始まったばかりだ。今後の展望について尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「今は社会の変化が非常に早く、○○教育など新たな教育施策が五月雨のように国や県から学校現場に降ってきます。そこに、しなやかに対応しつつも、最優先にするべきは生徒の学びです。これまで日本中の学校現場で行われてきたさまざまな取り組みも、当時は最適解だったのでしょう。しかし、長い間、継続していくうちに最適解でなくなってしまったものも多くあります。だからこそ、常に今の生徒たちにとっての最適解、もっと言えば学校現場の正統性を備えた最適解を共創していくという持続可能な学校改革マインドや、学校デザイン力を持ったリーダーたちが必要だと思っています」
県立高校と一口に言っても、学校の立地も、生徒が求める学びや進路もそれぞれ。“生徒が求める学校のあり方や学び”は全国一律ではない。学校改革の実現において、“わが校の最適解”をみんなで探すことが重要なカギとなりそうだ。
(文:吉田渓、注記のない写真:すべて鈴木氏提供)
東洋経済education × ICT編集部
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