栃木公立3校目のSSH、県立高校再編でスピード改革「常に最適解を更新する」学校教育へ 宇都宮東高校・附属中学校が中等教育学校に

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ただし、同校を中等教育学校に再編する狙いは先取り教育がメインではないと鈴木氏は話す。

「もちろん中等教育学校では先取り教育も行いますが、最大の狙いは、6年間の学びを通して生徒を育成することです。魅力ある学びを導入して、6年間の計画的・継続的な学びを構築する、というのが中等教育学校への再編の大きな柱なのです」

“魅力ある学び”がSSHにつながる理由

では、同校の生徒にとっての“魅力ある6年間の学び”とは何か。2024年4月に県教委から宇都宮東中高に異動した鈴木氏は、主幹教諭として教職員・生徒を対象にしたワークショップをそれぞれ開催して問いかけた。

「県民の皆様の期待が大きいとはいえ、中等教育学校にするだけではニーズに対応できるわけではありませんから、学校の新たな特色をつくっていく必要があると考えました。そのために、校内でワークショップを開催して、『こんな学びをしたい』『こんな学校になってほしい』という生徒たちや教職員の本音を聞いてみました。最も多かったのが、『探究的な学びをしたい』『特色ある学びの柱が必要だ』という声でした。そこで、魅力ある探究的な学びの実現のため、準備は大変でしたが、文科省のSSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定校の申請を行ったのです」

鈴木啓介(すずき・けいすけ)
栃木県立宇都宮東高等学校・附属中学校 主幹教諭

ここで1つ疑問が湧く。なぜ、魅力ある探究的な学びの実現がSSHの申請につながるのか。探究学習=SSHとはいえない。実際、鈴木氏は県教委時代に全国の高校を訪ね、英語に力を入れているならWWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業に応募する学校、また地域課題解決学習やアントレプレナー教育に取り組む学校なども見てきた。

教職員・生徒を対象にしたワークショップ

それでも宇東高・附中がSSHの申請をした理由は、主に3つあると鈴木氏は話す。1つ目は、同校には男女と問わず理系志望の生徒が多いこと。現在の高校2年生においては、160人中100人が理系であるほか、生徒を対象にしたワークショップでもSSH導入を希望する声が上がった。

2つ目は、近くに宇都宮大学や自治医科大学、獨協医科大学があるほか、首都圏と近く、日本大学や千葉工大、東京農大といった大学のほか、JAXAなど研究機関とも連携しやすいこと。宇都宮大学が実施する科学人材育成プログラム(iP-U)に応募する生徒も多いという。3つ目は、SSH指定校になることで、世界的に活躍する著名な科学人材と連携しやすくなることが挙げられた。

「文系でも理系の思考力は必要ですし、これまで私が視察した県内外100校以上の先進校のうち、探究学習が充実している学校の多くがSSH指定校でした。教員の伴走や評価など、学校を一体的に動かしていかなければ探究的な学びは実現できません。SSH指定校になると、国や県の支援や評価を受けながら校内で試行錯誤を繰り返し、学びを洗練させていくことができます。生徒を主語にして学びを構築するためには、生徒に還元できる文科省の事業自体を学校側が咀嚼して、魅力ある学校づくりに活用していくことが大切です。このため、SSH事業の採択がゴールではないのです」

同校では高校だけでなく附属中学校も含めてSSHの申請を行い、2025年度からSSH指定校となった。初年度の今年は放課後に中学生と高校生が一緒に学ぶSSH講座を開講。医学部進学講座や海外留学講座、画像編集ソフトを使って学校のパンフレットを作る講座などを行っている。ほかにも、SSHで物理班、化学班、宇宙班などを作り、生徒が希望するコンテストに出場することもできる。

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