新人エンジニアの修理対応台数が5倍に。レノボ・ジャパンが群馬の修理拠点でAI故障診断支援システムを導入し、熟練技術者の暗黙知を継承
この状況を変えたのが、過去の修理レポートのデジタル化とAI活用だった。蓄積された紙のレポートをすべてデータ化し、「この症状ならこの部品」というパターンをAIに学習させた。結果は劇的だった。
「今では85%から90%近くの精度で、1回目の診断で故障箇所を特定できる」(檜山社長)
この取り組みがもたらした最大の効果は、人材活用の革新だった。
新人でも、AIの診断支援により、ベテランと同等の診断ができるようになった。修理対応台数は5倍に跳ね上がり、「スキル要件が緩和できるため採用が容易になった」という。深刻な人手不足に悩む製造業にとって、これは大きな希望となる。
さらに興味深いのは、需要に応じた修理ライン増強も柔軟にできるようになったことだ。繁忙期に臨時スタッフを投入しても、AIがあれば即戦力として活躍できる。
「診断」プロセスの汎用性
檜山社長は、このAIシステムに意外な可能性を見出している。
「このアルゴリズムは医師の診断プロセスにも似ている。患者さんから症状を聞いて、原因を推定し、処方を決める。そのプロセスと非常に似ているんです」
実際、症状から原因を推定するというプロセスは、機械修理に限らない。設備保全、品質管理、さらには医療診断まで、幅広い分野で応用可能だ。
興味深いのは、この群馬のAIシステムが、高価なクラウドサービスではなく、オンプレミスのワークステーションで動いていることだ。日本マイクロソフトから移籍した佐藤久副社長は、この点を強調する。
「企業がAIを使うとなると億単位の費用が出てくる。でも群馬の事例は、ワークステーションにGPUを載せて動かしている。『予算ないから一番安いGPUで』みたいな感じでも、日常的に使えるものが作れる」
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