トランプ氏、関税収入による新たな所得減税を示唆、年収20万ドル(約2900万円)未満の層が対象に

トランプ米大統領は27日、関税収入を活用して年収20万ドル(約2900万円)未満の層に対する所得税を引き下げる考えを示唆した。トランプ氏はこれまでも関税収入が所得税収に代わり得ると主張してきたが、経済学者からはその実現可能性に疑問の声が上がっている。
同氏は「関税が発動されれば、多くの人々の所得税は大幅に引き下げられ、場合によっては完全に撤廃される。焦点は年収20万ドル未満の層だ」と自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。
トランプ氏の関税措置は世界経済を混乱させ、米国内でも物価上昇への懸念や景気後退(リセッション)に対する不安を招いている。
また、ドルや米国債などの安全資産としての位置付けについても懸念が広がっているが、ベッセント米財務長官は27日、ABCニュースの番組「ジス・ウィーク」で「これが必ずしも信頼喪失を意味するとは思わない」と指摘。「2週間や1カ月の間に起こることは、統計上や市場のノイズに過ぎない可能性がある」と語った。
同時にベッセント氏は、トランプ政権は「米国債市場が世界で最も安全かつ健全である」ことを投資家に示すための「基盤を整えている」と主張した。
一方、CBSニュースが27日発表した世論調査では、トランプ政権は物価抑制に十分取り組んでいないとの回答が69%に上った。トランプ氏の経済運営に対する支持率は3月初めの51%から42%へと低下した。
トランプ氏は、政権1期目の2017年に成立した所得税減税の延長を目指している。同減税措置の多くは25年末に失効する。また同氏はチップ収入や社会保障給付金に対する課税の減免、法人税率の21%から15%への引き下げも提案している。
関税交渉進展を強調
ベッセント氏はこの日、各種世論調査に応じる形で発言し、米国の個人消費は依然堅調であり、政権は二国間貿易協定の締結に向けた取り組みを進めていると強調した。
ベッセント氏はABCの番組で、中国を除く主要貿易相手17カ国との交渉が進行中だと説明。「今後90日間で交渉を進めるプロセスを整えた」とし、「一部の国々、特にアジア諸国との交渉は非常に順調に進んでいる」と語った。
同氏はまた、中国は米国が課した145%の関税に耐えられず、いずれ交渉のテーブルに着かざるを得なくなるというトランプ政権の見解を改めて主張。「中国のビジネスモデルは、安価かつ政府補助金を受けた商品を米国に輸出することに依存している。この流れが突然止まれば中国経済も急停止を余儀なくされるため、最終的には交渉に応じるだろう」と話した。
トランプ氏は米中間で貿易協議が進んでいると主張しているが、中国側はこれを否定している。ベッセント氏は、トランプ氏と習近平国家主席が直接対話したかどうかは把握していないと述べた。
ベッセント氏は、先週ワシントンで開かれた国際金融会議の場で中国側の関係者と顔を合わせたとした上で、「主に金融安定や世界経済の早期警戒システムといった従来の議題が中心だった」と説明した。
さらに、中国との交渉には前進する道筋があるとし、「緊張緩和」から「原則合意」に至るものだとの見解を示した。
「貿易協定の締結には数カ月を要する可能性がある」としながらも、原則合意に達し、貿易相手国がその取り決めを順守すれば「関税が再び最高レベルに戻る事態を防ぐことができる」と語った。
著者:Catherine Lucey
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