芝浦工業大学、なぜ改革で高評価?地道でも着実「全学で教職員を育てる」仕組み 「FD・SD」プログラムを学外に開放するメリット

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学生による自己評価や授業改善支援を実施

芝浦工大は、期待された効果を上げられていなかった学生による授業評価アンケートを2019年に全面的に見直し、シラバスに掲げられた目標に到達できたか、を学生に自己評価してもらう形に変更した。2024年には、学生自治会からの要望で、授業満足度とほかの学生への推薦度が評価項目に加えられた。

榊原暢久(さかきばら・のぶひさ)
芝浦工業大学 教育イノベーション推進センター長 教授
(写真:芝浦工大提供)

一方で、芝浦工大は、FD活動に学生の視点を活かす取り組みとして、学生が授業観察のためのコンサルタントとなり、大学教員の授業改善を支援するSCOT(Students Consulting on Teaching)活動を取り入れている。

応募後に半年間の研修を受けた学生は、教員との事前面談で観察のポイントを定めたうえで授業を観察し、学生の視点で気付いた点などを報告、改善提案を行う。SCOT生は、大学臨時職員扱いとなり、謝金を受け取れるほか、社会人スキルを学び、企画やコミュニケーションの能力を高めることができる。

榊原氏は、十数年前に北米で開かれたFD担当者の会議でSCOT制度を知り、国内では帝京大学に続いて導入した。

「学生には、SCOTの役割は授業『評価』ではなく、教員の授業改善のための『支援』にあることを徹底している。SCOTを利用する教員は年間10人ほどだが、SCOTを経験して飛躍的に成長する学生がおり、学生を育てる優れた課外プログラムにもなっている」と明かす。

国内の大学のFDの取り組みはまだまだ発展途上にある。その現状を先進的なFDと位置づけられる取り組みをしている芝浦工大の榊原氏はどう見ているのか。

「本学のFDは、国内に前例となる取り組みが少ないので試行錯誤しながら進めてきました。大学によって、よりよい大学教育の方向性は異なってくるはずなので、FDの取り組みもさまざまにあっていいでしょう。本学は、アジア工科系大学トップ10を目指すという長期ビジョン、『世界に学び、世界に貢献するグローバル理工系人材の育成』という教育理念を共有することで、教員・職員・学生が協働することを目指しています。FDの取り組みを進めるには、大学組織が一丸となるためのビジョンが大切です」

芝浦工大ではプレFD以外は、FDプログラムを強制することはなく、必要な時に必要な研修を受ける教職員の権利として運用している。例えば、大学経営に関わる役職に就いた際に研修を受けるよう背中を押すことはあっても、あくまで権利としているのは、本人に課題意識がなければ効果は薄いと考えてのことだろう。

今後、プレFDを受講した教員を採用したり、受講履歴を評価制度に組み込むことを考えることもあるかもしれないが、今はその時期ではないという。だが、「FDによって、学内で共通言語で話せるようになったと感じている」と榊原氏が話すとおり、FDやSDがビジョン達成の1つの手段としてうまく回り始めているということではないだろうか。

(文:新木洋光、編集部 細川めぐみ、注記のない写真:Graphs / PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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