
撮影は被写体とのコミュニケーション、人類学にも生きる(撮影:今 祥雄)
[著者プロフィル]小西 公大(こにし・こうだい)/東京学芸大学 多文化共生教育コース准教授。1975年生まれ。専門は社会人類学、南アジア地域研究。インドや日本の離島をフィールドに、アートや芸能、音楽の力を通じた社会空間の創造に関する研究を進めている。変人學会理事。拡張人類学研究所メンバー。著書に『萌える人類学者』『インドを旅する55章』など。
旅人として、人類学者として、著者は30年以上にわたってインドの沙漠地帯に通い続けた。論文では表に出ない人類学者のヘタレな部分を赤裸々につづった本書は、ユーモラスな青春記であると同時に、等身大の人類学入門のような趣もある。
──学生時代、研究室の飲み会の席で、教授に「自分を壊してきなさい。話はそれからだ」とお灸(きゅう)を据えられたのがきっかけで、インドに旅に出たと。
人類学の大塚和夫先生ですね。あの言葉は本当に刺さりました。正直、怖かった。本書では、当時のやり取りをできるだけ忠実に再現しましたが、改めて思い返しても迫力がありました。
僕が得意げに記紀神話について話した後、「ちょっといいかね。少しカラむぞ」と言われて、ハッとした瞬間、「おまえさんな……」と始まって、そこから延々30分くらい説教を受けたんです。
厳しいですよね(笑)。今の感覚でいうと、ちょっとマッチョイズム的な雰囲気もあるかもしれません。でも、やっぱり心に響いてしまった。その言葉に背中を押されて、インドに「自分壊しの旅」に出ました。
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