通級指導歴17年のベテラン教員に聞く「自分らしい学び方の追求」に必要なこと どんな子も「勉強ができるようになりたい」

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以前、通級の生徒が通常学級でいやな思いをすることがあった際には、NHKの番組を教材として活用しながら、通常学級で「いじめ」と「いじり」の違いについての理解を深める取り組みを実施したこともあります。通常学級の生徒が得た学びも多かったようで、いやな思いをした生徒がクラスに来やすいようにと支援者の側に回る生徒が増えました。悪意のある「告げ口」と誰かを守るための「報告」の違いについても皆で考える機会を持ったことで、気になることがあれば報告してくれる生徒が増えたこともよかったと思います。

――三富先生がこれまでに指導を担当された生徒の高校進学率は100%とのことですが、高校進学に向けての支援で重視していることについてお聞かせください。

高校入試のためだけの支援ではなく、中学1年生の時点から1人ひとりに合った学び方を見つけ、「この方法ならできる」という経験を積み重ねていくことを重視しています。入試の際は、生徒の特性に応じて、問題用紙の漢字にルビを付けてもらえるようにするといった合理的配慮の申請も行っています。

高校入試における合理的配慮の申請にあたっては、申請する「合理的配慮」の内容を中学校の学習においても実践してきたという実績が必要になります。そのため、できるだけ早い段階で、その子に合った学び方を探して実践していくことが重要です。

「特別支援教育の知見を持つ教員」をいかに養成するか

――学校現場における特別支援教育のニーズは増えているにもかかわらず、専門的な知見を持つ教員がなかなか増えていません。この現状を変えるには、どのようなことが必要だとお考えですか。

例えば、LDの指導方法は30年以上も前に日本に共有されているのに、いまだ現場には十分に浸透していません。しかし現場の先生方が、特性を持つ子どものことをよく理解していないと、子どもは自分に合わない学習法を強いられることになってしまいます。

私も特別支援学校の教諭免許は持っていたのですが、初めて通級担当になったときは何もできませんでした。気合い・根性・経験値だけではどうにもならず、かといって指定の免許もありませんから、特別支援教育士や公認心理師の資格を取るなどして必死で学んできました。今だって毎日「これがベストなのか」と不安です。だから、つねに新しい知識を入れておくことは絶対に必要だと思っています。

最近はオンラインで学べる外部研修も増えているので、特別支援学級や通級指導教室を担当することになった先生方には、子どもの特性に合わせた指導法について最新の知見を積極的に身に付けてほしいですね。

ただ、教員個人の努力でカバーできることには限界があります。理想を言えば、大学の教員養成課程で特別支援教育に関する知見を身に付けた専門家を養成して各校に配置し、各校ではその専門家のOJTの下で若手教員が実践的なスキルを身に付けていく仕組みを作っていけるとよいのではないでしょうか。そうすれば、特別支援級や通級を担当できる教員はもちろん、インクルーシブな学級経営ができる担任も育つはずです。

子どもが学ぶことを諦めずにすむようにするには、自分がどんな特性を持っているのか、その特性に合わせてどのような学び方をすればできるようになるのかを、10歳ごろまでに把握しておくことが望ましいと言えます。そのためには、とくに特別支援教育の知見を持つ小学校教員をもっと増やさなければなりません。

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