半導体エンジニアが半導体工場の建て方を超解説 TSMCもアメリカつまづいた工場建設の難しさ

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優秀な人材が豊富にいるかも必須の条件である。半導体工場は24時間休まずに稼働することが前提であり、また技能を必要とする作業も少なくない。

半導体は物理・電気・機械・化学など、幅広い技術分野にまたがった業種であり、半導体を専攻していない人でも活躍できる業務が存在する。半導体工場だけでなく、製造装置メーカーの現地サポート事務所も24時間稼働する半導体工場のために必要だ。補助資材などの供給のために物流業者も重要な役目を担う。

そのため道路事情も考慮が必要だ。シフト勤務の交代時間帯にはどこの半導体工場も渋滞が課題となっている。上下水道や道路などのインフラ整備は時間を要するものであり、誘致自治体との事前の連携が重要である。自治体からの財政的な支援策も選定する上での重要な要素である。

これらの様々な要素を考慮し建設候補地を絞りこんでいく。たいていは複数の場所が候補として残る。選定の最終的な決め手となるのは意思決定者のその土地に対する思い入れなのかもしれない。

工場の設計・レイアウトや業者選定、各種申請

建設予定地の選定と並行し、工場の設計作業も開始する必要がある。半導体工場を建設する能力があるゼネコンは数社に限られているため、早い段階で業者選定を行い、協力を求めて工場建設プランを策定する必要がある。工場設置認可申請、開発許可申請、建築確認申請や環境アセスメントなど行政に対する届け出や申請も早めに行う必要がある。

工場自身の設計作業と並行し工場レイアウトの設計もこの時点で行われる。半導体工場は複雑な工程を繰り返し行うため、ジョブショップ生産方式をとっている。フロアをいくつかのエリアに区切り、同じような半導体製造装置を複数並べて工程ごとにグルーピングして設置する(図1)。

この時点で半導体ウェーハを運ぶための自動搬送システムメーカも選定される。いくつものパターンの搬送シミュレーションを行い、最適な搬送経路を決定し、工場設計側と天井強度などの擦り合わせを行う。製造装置によっては特殊な免震床や工場側にメンテナンスのためのクレーンを準備する必要もある。

半導体工場のレイアウト例
図1:半導体工場内のレイアウト例(筆者作成)
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