アカデミックなリベラルアーツ教育プログラム
李さんが最も印象に残ったのは、再生可能エネルギーに関する授業。欧米の再生可能エネルギーの現状について学んだうえで、風力発電のメリット・デメリットについてオンラインクラスで、英語でディスカッションを重ね、そこから導き出した答えを自分なりにまとめてレポートにしていきました。日本の高校の授業ではほとんど取り上げられることのない課題を通して、視野を広げることができたのもよかったと言います。
ただ、「後半の英語で英語を学ぶ授業では、ラテン語学習も必要になり、精神的にもかなり苦しかった」と李さん。しかし、クラス担当のネイティブと日本人スタッフによる手厚いサポートやクラスメイトとの励まし合いなどでなんとかクリアできたそうです。
やはり、こういうプログラムをやり通せるかどうかは、本人の強い意志はもちろんですが、サポートシステムや仲間の存在がどれだけあるかも重要です。プログラムを選ぶ際には、こうしたサポート体制や卒業率もチェックしておきたいポイントです。ちなみに、DDPの卒業率は約90%だそうです。
最後に、日米の授業を比較して、感じたことを李さんに聞きました。

数学の授業は日本のほうが優位だけれど、例えば芸術や音楽についての深い学びや、実践的な社会課題と結びついた学びなど、文理を問わない分野の広さと深さは日本の教育にはない魅力だと言います。近年、日本でも探究的な学びが重要視されていますが、そもそも学びに対する考え方が欧米とは違うようです。
また授業のやり方も日本の学校とは違い、圧倒的に発言の機会が多く、主体的に授業に参加することが求められるので、英語力だけでなく、コミュニケーション力も身についたという李さん。
DDPの学びを通して視野が広がったので、大学ではさらにさまざまな学問について学び自分の専攻を決めてから、大学の派遣留学制度を活用して海外大学に進学したいと考えているそうです。
DDPのデメリットは学費の高さ
このような学びを通して、クリティカルシンキングと世界の大学が求める高度なアカデミックな英語力を身に付けることができるDDPですが、最大のデメリットは何と言っても学費の高さでしょう。
資料によると、2年間の総費用は271万5000円。円安とアメリカの物価高騰により、さらにアップする可能性があります。
高額なので、誰でもできることではありませんが、高校の授業料無償化の動きも広がる可能性もあるので、その分をこうしたプログラムに回すのも1つの考え方です。また、海外大学の場合は初年度返済不要の奨学金を得て、世界中の大学から自分が選んだ志望大学へ進学することも可能なので、検討する価値はありそうです。
城西中学にも、このプログラムがあるので入学を決めたという受験生もいるそうで、今後李さんの後に続く在校生も増えていきそうです。
公立の千代田区立九段中等教育学校や通信制高校の日本航空高等学校通信制課程も加盟校に名を連ねていますが、加盟校では奨学金を出しているところもあり、総費用は異なるので確認をしてみてください。
少しずつ日本でも新しい学びの形が広がっています。進路は一つではありません。変化の時代にどんな学びがお子さんにとって有用なのか、まずは知ることから始めてみてはいかがでしょうか。
(注記のない写真:城西高校提供)
執筆:教育ジャーナリスト 中曽根陽子
東洋経済education × ICT編集部
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