東京メトロ「おいしい株主優待」で株価が上昇? 「ファン株主」の多い鉄道会社ならではの工夫

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ところが、鉄道セクターは沿線の顧客がファンとなって会社の株式を所有しているケースが少なくない。株主優待の特典で無料乗車券や沿線の施設の利用を楽しみにしている個人投資家も多い。株主優待を軽視すれば、ファンである個人株主からソッポを向かれる懸念があるというわけだ。

都心から横浜、横須賀、羽田空港などへと延びる京浜急行電鉄(京急)。同社は昨年末、株主優待を拡充することを発表した。「個人の方に京急グループをさらに理解してもらう」(IR担当者)ことが狙いだ。

今年3月31日時点で500株以上を保有する株主には、保有株数に応じて「京急プレミアポイント」を新たに贈呈する。このポイントは京急グループの各施設や加盟店で利用でき、PASMOへのチャージやANAのマイルとの交換も可能だ。

併せて、750株以上と1000株以上の区分を新設した。これらの株主には「電車・バス全線きっぷ」をそれぞれ6枚配布する。京急のIR担当者は「さまざまなシーンで使っていただけるように、株主優待をしっかりと運用していきたい」と意気込む。

継続保有特典としてクオカードを贈呈することにしたのは、京成電鉄だ。東京と千葉、成田空港を結ぶ路線を持ち、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドの筆頭株主でもある。

沿線に住んでなくてもお得

京成電鉄は今年1月に1株を3分割する株式分割を実施、これに伴い株主優待を拡充した。100株以上の保有で乗車証が1枚、1000株以上で2枚、3万株以上で定期券式乗車証1枚または回数券式30枚の乗車証を発行する。

加えて、保有期間が2年以上の株主に対し、500株以上で500円分、1000株以上で1000円分といったクオカードを贈る。「株主優待の拡充によって個人株主を増やしたい。そのため、沿線の方だけではなく、別の地域でも使えるクオカードを進呈する」(広報担当者)。

京成電鉄の場合、「株主優待を事実上縮小した」(前出の私鉄大手幹部)との見方もある。株式分割前は500株以上の保有で回数券の優待乗車証を4枚提供していたが、分割後は1500株以上で2枚にした。

分割後の1500株は分割前の500株に相当する。つまり優待乗車証の配布枚数は減少したことになる。今後個人投資家がどのような動きをするのか気になるところだ。

京急、京成電鉄についてはともに、アクティビスト(モノ言う株主)が大株主としてそれぞれの株式を所有している。株主優待拡充で個人投資家を呼び込もうとする会社の姿勢の背景には、アクティビストの「圧力」を緩和したいとの考えもあるのだろう。

なお、東京メトロは上場前までは国と東京都が全株式を保有していた。上場を経て個人投資家がどの程度の比率になったのか。6月ごろに提出が予定される有価証券報告書で明らかになるだろう。そのときには”かき上げ無料効果“が再び話題を集めるかもしれない。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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