東京メトロ「おいしい株主優待」で株価が上昇? 「ファン株主」の多い鉄道会社ならではの工夫
実際、X(旧ツイッター)上には、次のようなかき揚げ無料券に関する書き込みが数多くある。
「3月末の株主優待かき揚げトッピング権利獲得に向けてみんなが買い始めたのか、東京メトロの株価が上がってきている」「東京メトロ株は無料乗車券よりかき揚げトッピング無料券狙いの投資家が多い」
こういった個人投資家の反応に対して、市川室長は次のように述べる。
「最初から、かき揚げ無料券でバズることを狙ったわけではない。ほかの鉄道セクターの会社と比べて、株主優待が見劣りしないように考えた。当社は百貨店や大きなレジャー施設を運営していないが、めとろ庵のような当社グループ運営の店舗・施設で利用できるものを打ち出した」
東京メトロはもともと、株価に対する年間配当金の割合を示す指標である配当利回りが高いことで知られる。2月26日時点の配当利回りは2.19%。東急の1.34%、西武ホールディングスの1.3%を大きく上回る。
配当利回りが高いところに、珍しいトッピング無料券が加わったことで、個人投資家の注目度がさらに高まったようだ。
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今は「生活密着」が刺さる
トッピング無料券の株主優待は大手私鉄では珍しいが、提供している鉄道会社がないわけではない。JR東日本の株主優待にもトッピング無料サービス券がある。
JR東日本の子会社が運営する「いろり庵きらく」「そばいち」で利用できる。わかめ、かき揚げのいずれかのトッピングを選べる。ただ、冊子から選ぶ株主サービス券の1つであり、優待価格宿泊券などがある中で埋もれがちな面は否めない。
また、路線が都心部に集中する東京メトロとは対照的に、JR東日本の鉄道網は関東地方を中心とした広域にわたる。いろり庵きらくなどの店舗数は都内と地方都市で差があるため、都内以外に住む株主からすると利用機会がどうしても限られる。
東京メトロのかき揚げ無料券には個人投資家だけでなく、鉄道関係者の関心も高い。「打ち出し方がうまい。今は生活に密着したものが個人投資家に刺さる。割引ではなく無料なので、お得感が伝わりやすい」と、前出とは別の私鉄大手幹部は語る。
一方、めとろ庵のかき揚げは店頭価格150円のため、3枚だと450円の価値でしかない。「私ならば、かき揚げだけを目当てに鉄道会社の株は買わない」(私鉄大手のIR担当者)といった声もある。
上場企業の全セクターをみると、近年は株主優待を縮小する傾向にある。背景にあるのが個人以外の投資家による反対の声だ。機関投資家や海外投資家だと優待を使う機会がなく、メリットはほとんどない。むしろ配送費などで企業のコストアップ要因になっていると受け止められている。
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